メディアがガーシーに飛びつかなかった理由

これは裏を返せば、「2月までのガーシーはニュースバリューがなかった」ということでもある。

前述のプロデューサーは、「暴露の内容も、登院しないことも、人々の関心を誘うほどではなかった」とも言っていた。実際、ガーシー関連のネットニュースを注視してきたが、そのコメント欄は終始、「わざわざ書くことでもない……」という冷ややかなムードで推移している。

さらにテレビの報道局には、「こんなにレベルの低いニュースを扱う必要性はない」というプライドもあるはずだ。政治ひとつとっても、もっと報じるべきニュースがあり、「ガーシーのニュースなんてよほど数字がとれるわけでなければ扱いたくない」のだろう。

では、前述した「芸能事務所とのつき合いがあるからスルーしているのだろう」「メディアもガーシーの標的になることを恐れているのでは」というネット上の声は本当なのか。

もちろんテレビ局や大手出版社にとって重要取引先である各芸能事務所への配慮は存在するし、それ自体は他業界も同じ商慣習だけに、さほど責められることではないだろう。

ただ、それ以前にテレビ局や大手出版社が「ガーシーが暴露しただけのものに飛びつく」ことは基本的にありえない。

テレビカメラで撮影中の現場
写真=iStock.com/coffeekai
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私が各局のテレビマンに聞く限り、名誉毀損や侮辱に加担してしまうリスクがあっても、「人々の関心、社会的意義、信憑性などを含めたニュースバリューがないから報じなかった」だけのことだろう。

また、「メディアが暴露の標的になることを恐れる」ということも考えづらい。もちろん個人的につき合いのあったテレビマンや出版社要職などは多少恐れていたかもしれないが、局や社全体としての影響は少ないと思われる。

まずはリスク回避が第一

最後にもう1つ挙げておきたいのが、民放各局に顕著な“横並び”の意識。「ガーシーをどれだけどのように報じるか」という基準の1つに、「他局の裏番組が扱わないのにウチの番組だけ扱うのはリスクが高い」という意識があったように思えてならないのだ。

暴露という刺激的なフレーズで瞬間風速的な数字はとれるかもしれない。しかし、それ以上に視聴者と局内の両方から、「何でガーシーなんか扱わなければいけないのか。他にもっと報じるべきものがあるはず」などと批判されるリスクのほうが高い。

逆に言えば、リスクを負うほどのリターンは見いだせなかったのだろう。