「日本にも必ずゲーム実況の大きなブームが来るはず」

自分がもっともっと大きくなるための場所はどこか。考えるまでもなかった。YouTubeだ。当時、YouTubeはすでに大きな影響力を持つ動画配信サービスとして社会に浸透しつつあった。人気ユーチューバーもたくさんひしめいていた。

ヒカル『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)
ヒカル『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)

でも勝算はじゅうぶんあった。YouTubeはまだまだ過渡期。インターフェースも、動画投稿者の収益システムも、動画のクオリティもこれからどんどん変化していくに違いない。僕はその変化にいち早く適応できるだろう。その自信と確信があった。

なぜなら僕は工場をやめてから2年半のあいだ、ほかのだれよりもいろんなことを熟慮してきたからだ。あらゆる物事を突き詰めて考え、そこからさらに突き詰める、そんな思考訓練を繰り返してきた。発想力、応用力、分析力。それはだれにも負けない。そしてトーク力だ。トーク力は僕のいちばんの武器だ。なにせ小学生のときからいままでずっと磨いてきたのだ。

そうした僕の強みをすべて投入すれば、YouTubeの世界に間違いなく風穴を開けられる。大活躍できる。

2013年6月、22歳の誕生日を迎えて間もなく、僕はYouTubeチャンネル「Hikaru Games」を開設。これが僕のユーチューバーとしての出発点である。「Hikaru Games」はその名のとおりゲーム実況チャンネルだ。知らない人もいるかもしれないが、僕はもともとゲーム実況ユーチューバーだ。

そのときゲーム実況に目をつけたのには理由がある。当時、世界最多のチャンネル登録者数を誇っていたのは、PewDiePieピューディパイというスウェーデンのゲーム実況ユーチューバーだった(2013年時点でのチャンネル登録者数はおよそ1000万人)。そして彼がYouTubeをはじめたのが2010年である。

ITの世界では「欧米のトレンドが5~10年遅れで日本にやってくる」と言われる。そろそろだ。もうすぐ日本にもゲーム実況の大きなブームがやってくる。僕はそう見込んだのだ。

ヘッドセットを着用し、オンラインゲームをプレイする人
写真=iStock.com/Sabrina Bracher
※写真はイメージです

「トーク力を駆使すれば余裕で勝てる」

2013年、僕はそのときの日本のゲーム実況動画を徹底的に調べた。どれもたいしておもしろくなかった。100万回再生をコンスタントに稼いでいるチャンネルもあったがつまらない。実況のそのしゃべりがいまいちで、エンターテインメントになっていないのだ。それでも再生回数は稼げている。その理由はひとつだった。「マリオ」シリーズなどの任天堂の人気ゲームをチョイスしているからだ。

ようするに単純に有名なソフトを、発売直後に最速でプレイし、いち早く攻略してみせていたからにすぎない。ぶっちゃけ、これなら余裕で勝てると思った。

僕ならゲーム攻略にトーク力を吹き込める。それはこれ以上ない差別化だ。すでにたくさんのゲーム実況チャンネルが存在していたが、僕の勝ちは明らかだった。

【関連記事】
1247万回再生だったのに収益は328円…ユーチューバーが「稼げない仕事」に激変してしまった根本原因
「10個のリンゴを3人で公平に分けるには?」有名な思考クイズをひろゆきが解いたら…答えが斬新すぎた
なぜTikTokに「若いころの父親の写真」を投稿するのか…Z世代が得意とする「間接自慢」というお作法
睡眠時間をいくら削っても報われない…全国紙の元政治部記者がユーチューバーに転身した理由
マスコミがニュースを独占する時代は終わった…トヨタの社長交代が「YouTube発表」になった本当の理由