獲得票数は中条きよしや水道橋博士よりはるかに多かった
国会に一度も出席しないガーシー参院議員が除名されることになった。
戦後憲法の下で除名された国会議員は戦後混乱期の2人しかいない。予算案に反対討論をしながら採決で賛成に転じた小川友三参院議員(1950年)と、単独講和に反対する代表質問への懲罰として「陳謝」を要求され拒んだ川上貫一衆院議員(1951年)。議論百出の当時の国会の熱気が伝わってくる史実である。
70余年の時が流れ、著名人のプライベートをさらす暴露系ユーチューバーとして知られるガーシー氏の名がそこへ加わることになった。この間の国会史で汚職を犯した者や虚偽答弁を重ねた者は数知れないが、上記2人以降、除名という形で国会議員の地位を剝奪された者は誰ひとりいなかったのだ。
主権者たる国民の代表である国会議員の地位は重い。これは「話題のニュース」で片付けてはいけない問題である。
ガーシー氏は昨年夏の参院選比例代表でNHK党(「政治家女子48党」に党名変更)から出馬。中東ドバイに滞在しながら「帰国せず、国会に登院せず、海外からスキャンダルを暴く」ことを公約に掲げ、28万7714票を獲得し当選した。
芸能界から同じ参院選比例代表に出馬した歌手の中条きよし氏(日本維新の会、4万7420票)やお笑い芸人の水道橋博士氏(れいわ新選組、11万7794票)をはるかに上回る得票である。
暴露系ユーチューバーに期待するしかなかった有権者
自民党は首相や閣僚のヨイショを重ね、立憲民主党は政権批判に及び腰。その結果、支持率低迷の岸田内閣は延命している。
旧統一教会問題では被害者弁護団が骨抜きと酷評する被害者救済法が与野党の9割以上の賛成で成立した。国民世論と乖離した二大政党政治の談合体質は極まるばかりだ。
テレビには本会議場で居眠りする国会議員の姿が映し出される。中条氏が昨年末の国会質問で自らの新曲とディナーショーをPRしたことは、国会議員という地位の私物化を象徴する光景であった。
国会議員には2000万円を超える歳費に加え、文書交通通信滞在費や立法事務費、秘書給与などを合わせて1人あたり6000万~7000万円の税金が投じられているとされる。彼らは与野党問わず、それに見合う仕事をしているのか――。
国会不信が渦巻くなか、暴露系ユーチューバーに「国会議員を片っ端から成敗してほしい」という期待が集まったのは無理もない。