転がっているデータを拾い集める
参考になるデータは、いうまでもなくあちこちに落ちている。特にインターネットの時代である。まずは調べたい事柄について、ネットで検索することから始めるのが当たり前だろう。少し昔は検索名人という人たちがいて、見事な検索ワードでネットの海に沈んでいた重要情報を引き揚げてくれた。今でもその重要性は変わっていないが、このノウハウはずいぶんと一般化した。さらにいえば、インターネット自体も、ずいぶんと情報が探索しやすい形で整理されてきたといえる。
それでも、学生の卒業論文や修士論文作成に際して、こんなことを言う方がいる。「○○に興味があるのですが、参考になる論文とか資料とか全然ないんですよね」。この時代に、99%、あり得ないと思う。探し方が悪いか、探しているものがそもそも悪い。前者はテクニカルな問題であり、後者は意識の問題である。特に後者について、直接的な答えを探している人は、多分それは見つからない。そのうちまがい物をつかまされてしまう危険もある。「○○はどうして成功したのか? ○○でうまくやるためにはどうしたらいいのか?」。その直接的な答えではなく、その答えを考える手がかりを探そう。その手がかりをもとに、自分で答えを考えることこそ、レポートや論文の目的のはずである。
・ネット
直接キーワード検索は当たり前として、絞り込む対象としてはWikipediaでざっくりと概要を知ることができる。今時小学生でもそのぐらいのことは出来るから、これはあくまで始まりの一歩である。ただ補足しておけば、Wikipediaの情報には不確かなものもある。できるだけ、Wikipediaに掲載される元になった情報にあたろう。Wikipedeiaに限らず、元情報や複数の情報にあたって真偽を確認することは重要である。
もう一つ専門性をあげようという場合にはgoogle scholarがおすすめだ。こちらは学術論文をまとめて検索できるとともに、その論文がどのくらい引用されていて、どのように発展的な議論が行われているのかを知ることができる。googleには様々な検索機能が用意されており、これらの活用がネット検索のレベルをあげる。
http://scholar.google.co.jp/
学術論文というと読みにくいイメージがあるが、必ずしもそんなことはない。特に要約が載っている場合が多いから、そこだけ読んでも大体の内容はわかる。仮に全体を読むとしても、本よりも分量が少なくコンパクトだ。さらに、学術論文はミステリー小説のように謎を追うような展開にはなっていないから、最初にいきなり答えが書いてあり、その上で答えを導く証明がついているだけである。少し慣れれば他の多くの文章よりも読みやすい。
もっと慣れてくれば、学術論文の型がわかる。要約を読んだ上でチェックした方が良いのは、本文ではなく、巻末にある引用文献である。これを見れば、同じ分野にどういう研究があり、誰が何を議論しているのかがわかる。次に何を読めばいいか分かるし、たくさんの人が引用している文献があれば、それがその分野の権威的な論文であることも分かる。google scholarは、論文の引用状況も数え上げて可視化してくれるため、このあたりがすぐにわかるというわけである。
一点難をあげておくとすると、google scholarでは日本語の学術論文はあまりみつからないかもしれない。これはGoogleの問題ではなく、日本の学術論文がまだまだオンライン化されていないからである。最近では、CiNiiや機関リポジトリを通じてオンライン化が進んでいる。これから増えていくだろうとは予想される。
その他、もう少し個別なところでは、IR情報を各企業のホームページから集めることもできる。国や公共機関も様々なデータをネット上で配信している。例えば、我が国の商業の状況を長年にわたって調べている商業統計などは、今では経済産業省のページからエクセルでダウンロードできてしまう。昔は紙媒体しかなく、データは改めて自分で手打ちする必要があった。時代は明らかに変わっており、データは驚くほど転がっている。ただ、繰り返していえば、これらのデータは目的に応じて自分で加工しなければならない。この加工が創造的作業である。