N分N乗方式

そこは昨今注目を集める「N分N乗方式」で、1世帯の所得合算を家族人数分で割り、納税額を決める税制とのミックスを考えるべきです。このN分N乗方式は高額所得者に有利になる! という批判の声がありますが、有利になるのではありません。子供を多く持っている世帯の税額を「適正化」するだけです。これまで子供の多い世帯に対してあまりにも多額の税を負担させていたのを合理的な額にするだけです。

そのうえで、恩恵をあまり受けない中低所得世帯には現金給付で支援する。ですからN分N乗方式で恩恵を受ける高額所得世帯には現金を出さないように所得制限をかける必要があるのです。現金給付のところだけを見ていてはダメなのです。

いずれにせよ、あらゆる政策の根底には、「データ・分析・思想」が欠かせません。「そもそも現在の日本社会で、『年収1200万円超=高所得者』は妥当なのか」「日本で子育てをしたら、総額いくらかかるのか」「国としてどの部分にいくら支援したら、国民はもう1人子供を持てるのか」といった詳細なファクトデータを集めたうえでの政策構築をしなければ効果を発揮しません。まさに「EBPM(Evidence-Based Policy Making)」(エビデンスに基づく政策立案)というやつです。

それなくして、とにかく所得制限撤廃!!なんていう耳に心地いい掛け声を発する「少子化対策」を進めても、これまで同様、少子化は改善しないでしょう。

これまでどれだけ少子化対策が叫ばれ、政治家が何度となく政策立案してきても、一向に効果を発揮しないのは、データ・分析・思想のない政策立案だったからです。企業の戦略立案でもEBPMは重要ですね。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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