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まず「子供を持ちたいのに持てない」理由を探れ

防衛費の増額については、僕は賛成の立場です。もちろん賛否両論ありますが、中国・北朝鮮・ロシアと地理的に近い日本として、軍事力の均衡によって抑止力を高める防衛力の強化は必須だと考えるからです。

ただ、こうした「わかりやすい脅威」以上に急速に日本を蝕みつつあるのは、「一見わかりにくい脅威」、つまり少子高齢化です。統計を取り始めた1899年以来、出生数が最多だったのは1949年の269万人、いわゆる「団塊世代」でしたが、そのジュニア世代が出産時期をピークアウトしつつある現在、1年間の出生数は往時の3分の1以下にすぎず、先日の加藤勝信厚生労働大臣の発言によると、2022年はついに80万人を割り込む予想です。一方で、一年間に亡くなる日本人は約140万人います。単純計算しても、島根県の人口とほぼ同じ60万人強が毎年減少していることになるのです。

もし今、僕が若者だったら……、戦闘機やミサイル、戦車ばかり立派で、しかしそれを操るのは高齢者ばかりの「老いた国家」など、まっぴらです。

公園でサッカーをしている日本の子どもたち
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
※写真はイメージです

では、どうすればいいか。1つの方法は移民の受け入れを増やすこと。もう1つは生まれてくる子供を増やすこと。とはいえ、女性に向かい「産めよ・増やせよ」の大号令は時代錯誤です。子供を持つ・持たないは完全に夫婦間、あるいは個人の自己決定事項であり、国家が口を挟むようなことではありません。

ただし、希望はあります。理由は、日本人の大多数が「子供を持ちたくない」と考えているわけではなく、むしろ「様々な状況が改善すれば」「本当はもう1人か2人持ちたい」と思っているからです。ゆえに、この様々な状況を改善することが、まさに政治の使命なのです。

では、どのような状況改善が必要なのか。

それは「子供を持ちたいのに、持てない」主たる理由を探るところから始まります。種々の世論調査などによれば、経済的に余裕がないことを筆頭に、子育てに費やす人的・時間的コストの不足、社会(世間)の無理解という理由が並びます。この改善こそが少子化対策の柱です。

また、少子化現象を表す数字として、1人の日本女性が一生涯で産む子供の数である「合計特殊出生率」がよく引用されますが(現在は約1.3人)、この数字はあくまでも15〜49歳の全女性を対象にしたものであることにも注目すべきです。実は法律婚をしている夫婦に限定して「合計結婚出生率」を調べてみると、その数は限りなく2.0に近づくのです。夫婦世帯は昔も今も2人に近い子供を持っているのですね。