そうであれば、日本の少子化現象は結婚しない男女の増加が要因だとも言えます。

そうなると、若者たちが結婚しやすい環境を整える政策も少子化対策の柱になりますが、ここでもう1つ、結婚しなくても子供を産み育てやすい環境を整える政策も少子化対策の柱になると思います。

実は海外で出生率アップに成功した国々は、押しなべて「婚外子」の割合が高い。特に欧米諸国においては「法律婚ではない男女間に生まれた子供」の割合は、全子供の3〜5割に達することに驚かされます(日本は2%)。未婚の母、未婚の父、同性婚、代理母出産……、新しい形の〈家族〉のもとに生まれてくる子供たちの存在こそが、「少子化」対策のカギなのです。

これはもう最悪の言葉

振り返って日本は、法律婚絶対主義国家です。「未婚の母(父)」「同性婚」「婚外子」といった“いわゆる伝統的でない家族”の存在を忌み嫌い、「日本古来の価値観を崩す」「社会が変わってしまう」と本気で憂う政治家たちが率いる国。

その象徴が「非嫡出子」という言葉ではないでしょうか。僕も弁護士として裁判書面を書く際は、「非嫡出子」と書かざるをえませんが、これはもう最悪の言葉ですよ。どんな環境に生まれようとも子供は子供。かけがえのない大切な命で、社会の宝なのに、その「子供」の前に「非」の一字をつける無自覚の差別意識。こうした偏見がなくならない限り、日本の少子化は今後も進んでいくはずです。

現在、国会では「少子化対策」の中心として子育て世帯への経済支援が主に論じられていますが、こちらも「何のため・誰のための政策・予算か」という根本原理や思想がなければ、単なる五月雨式の思い付き、一時のバラマキで終始してしまうでしょう。そう、これまでの日本の「少子化対策」の多くが実を結ばなかったように。

今回、野党はもちろん、自民党の茂木敏充幹事長も「子育て支援への所得制限撤廃」を口にしていますよね。しかし、支援する対象の設定はやはり必要ですよ。極端な話、年収が1億円、2億円の世帯に毎月5000円支給してもたいした少子化対策の効果は生まれません。

もちろん僕だって高額所得者いじめをしたいわけではありません。現状の「夫婦のうち高いほうの年収が1200万円を上回る世帯には、子育て特例給付金0円」が妥当とは思っていません。「年収1300万円世帯」でも子供が4人いれば、給付金がもらえる「950万円世帯」で子供1人の家庭よりも、生活は圧迫されているはずです。