日本の戸籍制度は世界からどのように見られているのだろうか。ヘルシンキ大学非常勤教授の岩竹美加子さんは「夫婦別姓が当たり前のフィンランドに対し、日本の選択的夫婦別姓の議論は40年遅れだ。日本は同姓を選ぶしかなく、諸手続きが煩雑というテクニカルな問題が注目されることが多く、社会の隅々にまで浸透している女性差別に深く向き合う議論はされていない」という――。

※本稿は、岩竹美加子『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

名前の記入欄
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別姓、同姓、複合姓、創姓から選べる

日本では、結婚すると夫婦同姓しかない。私は、最初は日本人と結婚し、10年間夫の姓を名乗っていたが、自分の名前のように感じたことはなく、離婚したとき旧姓に戻していた。

2018年の法改正によって、フィンランドには別姓、同姓、複合姓、創姓の4つの選択肢ができた。特に通知しなければ、それぞれが自分の姓を保持し別姓になる。変えたい場合は届けるが、夫婦別姓がデフォルトだ。

複合姓というのは夫の姓がA、妻の姓がBの場合、結婚後の妻の姓をBA、またはABとすること。従来はハイフンでつなぐのが普通だったが、2018年からはつながずに離して表記してもよいことになった。

また、2人共複合姓にもできるようになった。その場合、複合姓の順番は、2人で違っていてもよい。たとえば妻はBA、夫はABのように。

また、1人は元の姓のまま、もう1人は複合姓でもよい。つまり夫婦別姓である。ただし、前の結婚で得た、以前の配偶者の名前を新しい結婚で複合姓、また同姓として使うことはできない。

創姓は、結婚に際して新しい姓を作ること。2人の新しい門出を祝して作りたいと思う人もいる。ただし、どんな姓でも作ってよいわけではなく、いくつかのルールがあり審査を経て認められる必要がある。

教育文化省の下にある組織が、例として5000のフィンランド語の姓と700のスウェーデン語の姓をアルファベット順にリストアップしている。

興味深い例として、ルオツァライネンというフィンランド人と塚田という日本人のカップルが、「シンラウハ」という新しい姓を申請したが、認可されなかったケースがある。

シンは心、ラウハはフィンランド語で平和。2つの言語を混ぜるものであること、どちらの国の姓の慣習にも従わないものであることが不認可の理由だったことが、2010年5月のフィンランド法務省の姓名審議会議事録に記録されている。