子供たちに「学ぶ喜び」を教える挑戦

モチベーション3.0を高める要因に「創造性」があります。創造性と聞くと自分には一生縁がないような、天から与えられた特別な才能をイメージするかもしれませんが、本来は誰もが持っている機能のひとつです。

大黒達也『モチベーション脳』(NHK出版新書)
大黒達也『モチベーション脳』(NHK出版新書)

これまで曖昧な概念であった創造性が、さまざまな科学的研究により明らかになるにつれ、創造性の育成の重要性が世界中で認識されてきました。近年では世界各国で、初等教育のプログラムのひとつとしても創造性教育が導入されるようになりました。創造性教育の一環として、教師が問題すら提示しないまま、子供たち自身で問題を見つけだすような事例もあります。

こういったプログラムは、教師が生徒に知識を伝える既存のシステムや、平均から自分の学力がどれだけ差があるかを測る偏差値教育とはまったく違うものです。

教育の違いは、モチベーションにも大きく影響します。創造性教育によって「学ぶ喜び」を知ることで、社会に出ても自発的に学びつづけることができます。「テストの点数が上がる」といった予測しやすい外発的報酬と異なり、喜びのような内発的報酬は予測困難で不確実であるため試行錯誤が必要です。効率的ではありませんが、自分で答えを見つけ出そうとする過程が創造性につながります。

外発的モチベーションは創造性を抑制する

一方で、偏差値を上げるために勉強するという行為は、外発的なモチベーションを誘発しやすいといえます。なるべく教科書に沿って効率よく勉強し、高い点数を取って評価されるという明確な目標があるからです。社会に出ても同じように業績が平均より高くなるための努力をするのも、ある意味で偏差値教育の延長といえます。こういった外発的モチベーションは創造性を抑制してしまうことが知られています。

このように、教育の仕方によって、モチベーションのタイプが変わります。これからの時代で重要な「モチベーション3.0」を達成するには、偏差値教育が大部分を占めていた教育システムから、創造性教育をさらに取り入れてバランスをとっていかなければなりません。

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