中国人は自国の元を信用していない

ちなみに自国の通貨を信用していない国民として有名(?)なのは、中国人です。

中国人は基本的に自国の通貨を信用していないところがあり、お金がたまると外貨に替え、財産の保全を図ろうとします。

国もそのことはよく知っているので、中国の元はドルなどの外貨に替えることが強く規制されています。何もしないでいると、どんどん元を売ってドルに替えてしまうからです。

現在、中国政府は仮想通貨(暗号資産)を全面禁止にしています。これは中国政府が仮想通貨の危険性に気がついたからではなく、国民が元以外の通貨に財産を替えようとするのを防ぐのがいちばんの目的だと私は思っています。

これまでは世界中の国で、蓄積方法として米ドルを一定量持つのが当然でしたし、グローバルな貿易に関しても決済通貨に米ドルを使うというのが一般的でした。

ところが、ウクライナ戦争によりロシアのドル資産がアメリカに凍結されるなどの動きがあり、ロシアが中国に原油を売るときの決済通貨がロシアルーブルになったり、アジア諸国間での決済が元で行われるようになるなどしています。

つまり、元に対して基軸通貨としての役割が高まってきていて、米ドル一強の状況が少し変わってきています。

会社や個人の破綻と国家の破綻は意味合いが異なる

「国レベルでの破綻」とはどういうことかを考えるときに非常に重要なポイントがあります。

それは、会社や個人の破綻と国ではまったく事情が異なるということです。ここを一緒にしてしまうと、議論が混乱するのでぜひ次に説明することを覚えておいてください。

普通の会社や個人であれば、決められた期日に約束したお金を用意できなければアウトです。

ところが国であればお金を刷ることができるので、自国通貨で借金をしている限り、どんな金額だろうと必ず返せます。民間企業が印刷機でお金を刷って借金返済したら大変な犯罪です。無期懲役になるかもしれません(注)

(注)刑法 第148条
1.行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
2.偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

「なんだ、じゃあ国は絶対に破綻しないじゃないか。安心した」と思うかもしれません。確かにこの説明で納得する人はたくさんいます。

しかし、このロジックには穴があります。

国の破綻リスクというのは会社や個人のように「決められた日にお金を用意できるかできないか」で議論してはいけません。