「落ち込んだ人を励ましてはダメ」な理由
やけ酒がダメとなると、落ち込んだ時はどうしたらいいでしょうか。
実は、落ち込んでいる人に前向きな言葉をかけると逆効果ということが明らかになっています。
米ミシガン州立大学のモーザーらは、71人の女性被験者に、前もってポジティブ思考かネガティブ思考かを自己申告してもらいました。
その上で、①普通の画像を見る、②「覆面の男が女性の喉にナイフを突きつけている」などネガティブな感情を誘発する画像を見る、③ネガティブ画像を見て、無理に楽観的なコメントをする、のそれぞれについて被験者の脳の状態を調べました。
その結果、ネガティブ思考の被験者は、③の楽観的なコメントをさせられた場合、もっとも脳の血流の反応が激しくなったのです。
そもそも人間には、ポジティブな情報より、ネガティブな情報を重要視する傾向があります。
そのほうが生存には有利だからです。
これを「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。
普通の人でもこうしたバイアスに支配されていますので、落ち込んでいる人はなおさら物事の悪い面に目を向けがちです。
そういう人を励まそうとして、「頑張れ」などと声をかければ、悲観的な状況にある人に無理矢理楽観的になるよう強制してしまいます。
その結果、励まされるどころか、余計に気持ちが混乱してしまうというわけです。
また、「バックファイア効果」と呼ばれる現象もあります。
ある認識を持っている人に、「それは間違いだ」と指摘しても、逆に認識を強めてしまうことを指します。
つまり、ネガティブ思考に陥っている人に、「ポジティブになろう」と呼びかけても、ネガティブ思考を強化してしまうのです。