ロシアが核兵器を使用する可能性はほとんどない
ウクライナに侵攻したロシア軍は、核を使うかもしれないとほのめかしている。実際に使う可能性もあるかもしれない。戦術核は、「大きい爆弾」だという認識なのだ。
ロシア軍は当初、数日か一週間でウクライナ全土を手中に収め、作戦を完了できると踏んでいたと思われる。ウクライナ軍は、崩壊する。ゼレンスキー政権は、すげ替えてしまえばよい。だが、その通りにならなかった。報道のとおりである。一発逆転で、核兵器を使うか、生物兵器、化学兵器のような大量破壊兵器を使う可能性があったか。結局使わなかったとしたら、その理由は、戦術的に意味がなかったからだと思う。戦術核兵器は、敵の主力部隊など戦術目標が狭い範囲に集中していて、それに打撃を与えると戦況が劇的に改善する場合に、用いるべきものだ。
戦争の初期、ロシア軍は進軍する部隊の周囲から、ゲリラ的に対戦車砲などで狙われた。敵は周辺にまばらに展開していて、そもそも戦術目標がない。戦争の中期は、戦線が膠着し、双方が砲撃やミサイル攻撃を繰り返した。戦術核兵器の出番は、やはりなかった。この先、ロシアの退却と敗北を防ぐ、ロシアにとって理想的な、戦術核兵器を使うドンピシャのタイミングが訪れるとは思わない。
今回はなんとかなったとしても、今後、どの国も、核兵器を使わないだろうとは楽観できない。中国は、核兵器に頼らないで、アメリカ軍に完勝する作戦を練っているはずである。
中国は台湾有事で核を使うのか
中国が台湾に侵攻する場合、戦術核を使うだろうか。戦術核を使わなければならないほどの、目標はない。そもそも、台湾は中国の一部で、同胞の国で、敵国ではない。核兵器を使ったらおかしい。政治的に説明がつかないことになってしまう。それに、中国は通常戦力で台湾を圧倒していると思っている。ふつうに戦闘を続ければ、勝利がえられるはずだ。
航空機の戦闘も、通常戦力(通常弾頭のミサイル)で十分なはずである。しいて言えば、台湾海域に接近するアメリカの原子力空母は、重要な戦術目標になる。核弾頭ミサイルで攻撃すれば、巨大空母と言えども、ひとたまりもないだろう。けれどもその必要はないだろう。
黒海で、ロシアの巡洋艦モスクワが、ミサイル2発で撃沈された。精密誘導のミサイルが目標に命中すれば、大型艦艇であっても戦闘不能になる。空母は、往年の戦艦と違って装甲が厚くない。通常弾頭のミサイルで、それなりの打撃を与えられるはずだ。