外部出身の会長は「お飾り」と言われても仕方ない

政界や経済界の思惑が入り乱れて誕生した外様の会長は、過去5代とも1期3年で交代している。

アサヒビール出身の福地茂雄氏、JR東海出身の松本正之氏、三井物産出身の籾井勝人氏、三菱商事出身の上田良一氏、みずほフィナンシャルグループ出身の前田晃伸氏だ。

かつて、ある総務相経験者が「外部からやってきて公共放送の使命を完全に理解するのには時間がかかる。外から来て、急いで勉強するのは難しい」と喝破したように、伏魔殿とも揶揄やゆされるNHKに突然、単身で乗り込んでも、できることは限られる。

メディアという特殊な業界の価値観に翻弄ほんろうされ、なかなか心を開かないNHK職員の協力も得られにくい中、実績を上げることは容易ではない。

NHK放送センター(東京都渋谷区)(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
NHK放送センター(東京都渋谷区)(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

外様会長は、またたく間に在任期間の3年間が過ぎ、目立った成果も上げられないまま、結局、再任されずに退陣するパターンが続いている。

2期以上務めた会長となると、生え抜きで3期目の途中で辞職した海老沢勝二氏(1997~2005在職)までさかのぼる。

外様会長が「お飾り」と嘲笑されても仕方がないだろう。

前田・前会長は3年やって「方向性を示した」だけ

退任した前田・前会長は、受信契約獲得のための経費節減策として「訪問によらない営業」に力を注ぎ、中間持ち株会社を設立して子会社や関連団体を整理し、若手を登用する人事制度も導入した。「スリムで強靱きょうじんなNHKに生まれ変わるための改革を行い、方向性は示した」と胸を張った。

しかし、目玉となった受信料の1割値下げは、当初は衛星放送だけを想定していたのに、首相官邸や自民党の圧力に抗し切れず、地上放送まで対象を広げざるを得なくなった。視聴者にはありがたい話でも、大幅な収入減に甘んじなければならないNHKにとって、会長は「防波堤」の役割を果たせなかったことになる。

何より、NHKにとって最大のテーマである「公共メディア」のあり方や「ネット受信料」の導入には、まったく手をつけることができず、そっくり積み残してしまった。

前田氏は最後の会見で「任期3年での改革は非常に難しい」と正直な気持ちを吐露。「具体的にどうするかは、次の方にやっていただきたい」と、後任に丸投げした形でバトンタッチした。

NHK改革の本丸は「報道機関としての使命」

稲葉・NHKは、国民注視の中で、国民の共有財産であるNHKの歴史を新たに刻むことになる。だが、このタイミングで就任する会長は、歴代のトップと違って通り一遍の覚悟ではすまされない。

ひとくちにNHK改革といっても、営利を追求する民間企業とは「改革」の意味合いが決定的に異なる。

国民の「特殊な負担金」と称する受信料を主財源とする特殊法人のNHKの経営は、収益を求めて四苦八苦する必要がなく、支出を適正にコントロールすることに重点が置かれる。民間企業の経営理念とは程遠いため、経済人の経験が生かされるとは言い難い。