賃貸という選択肢

終の棲家として、新たに物件を購入するほか、持ち家から新たな持ち家に買い替える、現在の持ち家を売却して賃貸物件に住み替えるという選択肢もある。賃貸と分譲のどちらがいいかは住む人によって変わるが、賃貸のいいところは、身軽に住み替えができる点だ。

たとえば、終の棲家と思って入居したところ、近くに騒がしい住民がいて「住環境がよくない」と感じたとしたらどうだろう。賃貸ならば気軽に引っ越すことができる。また、天災などで建物がダメージを受けても、次の家に移りやすいことは大きな利点である。

「賃貸だと、自分のものにならないから……」と敬遠する方もいるが、見方によっては、家の相続問題とは無縁となり、メンテナンスの手間が掛からないので「気が楽だ」ともいえる。

一方、デメリットとしては、分譲マンションに比べ、専有部分や共用部分などが全体的にワンランク下がる可能性が考えられる。

これまでの生活とこれからの生活の間に立つ標識
写真=iStock.com/BrianAJackson
※写真はイメージです

年齢で断られないUR賃貸

また一般的に、60歳以上になると賃貸物件は借りにくくなるといわれる。オーナーの意向と、保証人を代行する保証会社の審査が影響するためだ。

そこで、年齢で断られることがない都市再生機構(UR)で賃貸物件を探すのも手だ。

URは、本人確認のみで保証人や保証料は不要。家賃は高めだが、礼金・仲介手数料なし、更新料不要で、費用面での負担を抑えられる。

東京都内なら、URより割安な東京都住宅供給公社(JKK東京)もある。ほかにも高齢者向け優良賃貸住宅や、サービス付き高齢者向け住宅も増えている。

「もう60歳」ではなく、「まだ60歳」

「中高年だから」「もう60歳だから」などと、年齢を理由に理想の住まいをあきらめる必要はない。たしかに60歳は人生の分岐点かもしれないが、同時に通過点でしかないともいえる。「もう60歳」ではなく、「まだ60歳」。中高年にもたくさん選択肢があることを、ぜひ覚えておいてほしい。

住まいほど人生に密着したものはない。

どんな人の人生にも、その中心に家がある。家が理想的な状態であれば、心のよりどころになって、安心して外に行くこともできる。

住まいは人生の拠点であるとともに、幸せの象徴ともいえる。いくつになったとしても、「納得できる住まい」に出会い、よりよい人生を歩まれることを願ってやまない。

【関連記事】
【関連記事】2023年のマンション購入は吉か凶か…"平均年収445万円時代"に絶対にやってはいけないこと
75歳まで我慢すれば84%増になるが…お金のプロがあえて「66歳から年金受給」をオススメする理由【2022上半期BEST5】
貯金ゼロ、年金が月5万円でも生きていける…71歳シングル女性が明かす家計簿の中身【2022下半期BEST5】
なぜ勝手に内見を断っていたのか…不動産会社の「値下げしないと売れない」を信じてはいけないワケ
「実家に誰も住まなくなったのに売却できない…」58歳ひとり息子がバカ高い"維持費"を払い続けるワケ