ベラルーシ当局は、国民を動員する計画はないとしているものの、リウバコワによれば、同国は2022年10月に軍への入隊適性検査を始めている。ベラルーシの男性は書簡または電話で、軍への入隊登録を行う事務所に召喚されていたという。

「バスターミナルでの案内は、国民を入隊登録事務所に行かせるためのもう一つの手段のように思える」とリウバコワは述べた。

ベラルーシ国防省は2022年10月、兵役の義務がある全ての者について、毎年恒例の資格検査を年内に完了させると説明。しかし国民の動員は予定していないと述べていた。

リウバコワは同年12月に、「プロパガンダやさまざまな広告がポスターや動画の形で掲示されており、いずれも男性に入隊登録事務所に出向いて検査を受けるよう促している」と指摘。検査の手続きが延長されたことを示唆していた。

彼女は本誌に「このことは、今後の動員に向けた準備とも解釈できる」と述べた上で、こう続けた。「ベラルーシで今すぐ国民の本格的な動員が始まる兆候はみられないが、今後そうなる可能性は排除できない」

ベラルーシが動員を躊躇する理由としてリウバコワは、「ベラルーシ軍は士気が低く、動員を行えば反政府活動に火をつけることになりかねない」と説明する。

相互依存の関係にあるプーチンとルカシェンコ

これに対してベラルーシ政府は「NATOが国境地帯に部隊を集結させており、いつでも(ベラルーシに)侵攻できる状態にある」と、今にもNATO軍に攻め込まれるプロパガンダを流している。

プーチンはベラルーシに軍の装備品や部隊を集結させており、ルカシェンコはとりわけ2020年の大統領選挙が国際社会から「不正選挙」と非難を浴びた後、政治的な生き残りをプーチンに頼っている。

しかしベラルーシの反体制派指導者スベトラーナ・チハノフスカヤの政治顧問を務めるフラナク・ビアコルカは、12月に本誌に対し、プーチンとルカシェンコは共生関係にあるものの、ベラルーシが近い将来、ウクライナでの戦争に直接参戦する可能性は「きわめて低い」と述べた。

それでもビアコルカは、ルカシェンコが唯一の盟友であるプーチンのために、今後も飛行場や地域一帯に関する諜報をはじめとする支援を提供していくだろうと予想した。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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