「紙に書き出す」を徹底失敗を許す親の姿勢も
与えられた計算式をそのまま解くだけではなく、かといって公式を使うわけでもなく、問題の中にひそむルールを読み取り、答えを探すのが、算数における「実験力」である。特定の条件下での確率を求めたりするときに必要な能力だ。
「公式を使わないので、算数が得意な子でも試行錯誤しながら根気よく解くしかない。そこがまさに『実験』なのです」(富永氏)
学校で習うのは小学校高学年以降。「場合の数」などの単元がそれにあたる。小学校でも高校でも、問題文から法則を読み取って、ある条件下の数値を求めるという基本的な解法は変わらないので、小学校時代につまずくと後々まで引きずるのが怖いところ。
「この分野は、必勝法がないだけに苦手になりやすい。それを防ぐには、考えるプロセスを『紙に書き出す』のを徹底することです。
問題の性質上、書かないと解けないのに、今の子はノートが汚れるのを非常に嫌がり、なかなか書こうとしません。だから、ノートは汚してもいいということを親が教えて、習慣づけるようにするといいですね」(富永氏)
この「紙に書き出す」のにはもう一つ、「どこで間違えたのかを調べやすくする」という、重要な意味がある。親が子供の勉強を見てやるときには、「何がわからないか、どこで間違えたのか」を正しく知ることが大切だが、それには紙に書かれた解答プロセスをたどるのが一番。
ノートや裏紙をたっぷり用意して、解答までのプロセスを書き出し、間違えた部分は線で消すだけにして、消しゴムで消さないように子供に教えることだ。
また、親も、間違った答えを出した子供をむやみに叱らないこと。そんな心づもりを徹底してほしい。
次のぺージの〈問題〉には、カードやさいころが登場するが、日頃からトランプやボードゲームで遊ぶのが好きな子供は、こうした「実験力」を試すタイプの問題もやはり得意であるという。
「トランプやゲームには算数に通じる要素があり、遊びながら算数を理解するきっかけをつかむ子もいます。それを応用して、問題を見ただけでやる気をなくしてしまう算数アレルギーの子には、まずゲームを入り口にして、ルールを読み取る面白さを教えてやってもいいでしょう」(富永氏)