低所得者ほど得な「高額療養費制度」

高額療養費制度の自己負担の上限額は、70歳未満と70歳以上でまず2分し、それぞれを所得によって5ゾーン(アからオ)に区分している。

区分エ(年収約370万円以下)では5万7600円、区分オ(住民税非課税者)は3万5400円が上限である。

同じ治療を受けても、所得ゾーンが異なると、支払額に数倍の差が生じる。

高額療養費制度はまさに低所得者への優遇措置で、社会保障制度の神髄といえる。

同じ医師から同じ手術を受けても、区分によって自己負担が違う。

区分ウ(年収約370万円~770万円)に属するサラリーマンが、手術費として約10万円支払った場合、住民税非課税者の70歳の高齢者なら、8000円で済む。

「こんなに安くていいのか」と老人はつぶやくであろう。

70歳を超えると、病気がちになり、医療費が心配になる。

だが、住民税非課税者の場合、医療費の心配はいらない。69歳以下の上限は3万5400円で、70歳以上では、外来のみ8000円、入院・外来で1万5000円になる。

ちなみに、急がない手術(白内障など)なら、70歳になってから受ければ医療費を節約できる。

窓口で支払うのは自己負担限度額のみ

以前の高額療養費制度は、窓口で3割の自己負担を全額支払い、多く払い過ぎた分は数カ月後に戻ってくる仕組みだった。

これだと、一旦ある程度のお金を用意しなくてはならない。

いまはこの仕組みが改められている。「限度額適用認定証」を保険者に発行してもらい、それを医療機関に提出すれば、窓口では自己負担限度額だけ支払えばいい。

「限度額適用認定証」を提出しなかった場合は、窓口で3割の自己負担を支払い、後日払い戻しを受ける。

その際も、いまはこちらから請求しなくても、保険者(市町村や健保組合など)が超えた分(高額療養費)を口座に振り込んでくれる。

もっとも、保険者によっては、請求するよう通知を出すだけのところもある。

制度を知らなかった等の理由で、高額療養費の払い戻しを受けていない場合、診察日の翌月1日から2年以内の分については、領収書等の証明書類があれば請求可能だ。