アカデミー賞には出席しないワケ
世界で高い評価を受ける宮崎駿とスタジオジブリだが、ジブリ自身は長い間世界を目指していなかった。
海外各国でのビジネスパートナーも、利益よりは信頼関係が第一に選ばれている。海外プロモーションもパートナー任せで、自らが作品を積極的に売り込むことはほとんどない。商品ライセンスやイベントなども、もっと大きな展開も可能だったはずだ。
『千と千尋の神隠し』も含めて3度あった米国アカデミー賞のノミネートで、宮崎駿が一度も授賞式に出席しないのはその象徴である。自分から出るのでなく、外から引っ張られ海外に広がっていく。2000年代初頭まであった他の多くの日本アニメに共通する特徴だ。
むしろ宮崎駿や高畑勲の情熱は世界の傑作アニメーションを日本に紹介することに向けられた。2001年に東京都三鷹市にオープンした三鷹の森ジブリ美術館では「ユーリー・ノルシュテイン展」「ピクサー展」「アードマン展」が企画されている。
さらに三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーでもフランスやロシア、北米の傑作を配給、上映してきた。一方で海外の作品、作家、スタジオを積極的に紹介する活動やグローバルな視点が、ジブリと海外のつながりを深め、世界に押し上げたこともまた確かだろう。