一方、パナソニックと好対照なのが日立製作所だ。12年3月期決算で2000億円の黒字となり、パナソニックとは明暗を分けた。同社もまた、アジアビジネス強化のため、12年4月に本社機能の一部を中国・北京に移転した。森和廣副社長が日立グループ中国・アジア地区総裁として自ら北京に乗り込み、調達担当3名、戦略担当3名も着任した。

日立製作所執行役社長
中西宏明

リーマンショック後に、約7800億円という巨額赤字を計上した日立だが、その後見事復活、電機業界の決算で一番の勝ち組となった。業績回復の立役者である中西社長は、この2月、中国・北京への本社機能の一部移転を発表した。

「中国という環境に身を置いて、そこから市場環境を見ないと最適な事業戦略を打つことはできない」という中西宏明社長からのトップダウンの命だった。

同社も海外売上高比率は43%と高く、なかでも中国の比率は13%と最大。このほど策定した「中国事業戦略2015」では15年の中国での売上高を約1.6倍の1600億元(約1兆9200億円)にまで拡大したいと意気込んでいる。

中国で同社の中心的ビジネスとなっているのは消費財ではなく昇降機、建設機械、高機能材料など。これらについて、今後北京を拠点に現地の視点で市場分析や戦略立案を行い、事業拡大を図る予定だ。調達担当者も一部移転することにより、総コストの5%削減をできるだけ早い段階で実現したいとしている。海外調達比率も現行の36%から15年度をメドに50%にまで引き上げる予定だ。

同社によると、中西社長が海外移転を決意した背景には、こんなエピソードがあるという。

同社が03年に米IBMのHDD部門を買収して設立した子会社、日立グローバルストレージテクノロジーズがあったが、その立て直し役として現職に就く以前の中西社長が米国で陣頭指揮を執っていたことがあった。そのとき、日本で優秀だとされていた人材を連れていっても、米国では意外にも思うように本領を発揮できない面があったのだという。

「環境が変われば人間も変わり、臨機応変に戦略も変えなければいけない。そうした社長の実体験が『現地に身を置いてみて考えることの重要性』につながったのではないかと思います」(同社広報)

こうした背景もあり、真のグローバル化を目指して、2011年から「グローバル人財マネジメント戦略」も開始した。今春入社した新卒社員の5~6%が外国人だが、基本的に日本人もすべてグローバル要員として採用している。

今年度から2年間、約2000人の若手社員を対象に、1~3カ月間、新興国の語学学校や顧客先などに派遣することにしており、「数カ月で海外事情がすべて理解できるわけではないが、皮膚感覚で海外を知ることに意味がある」(同)。