クラウド事業の拡大を急ぐアップル

同じことは、アップルにも当てはまる。アップルはiPhoneなどのデバイスで収益を獲得しつつ、ユーザーにApp StoreやiTunes、iCloudなどのサービスを提供することによって高い成長を実現してきた。ただし、足許では世界的な半導体不足の深刻化によってiPhoneの生産に支障が出るなど収益の下押し圧力が強まっている。その状況下、アップルは中国のゼロコロナ政策などのリスクに対応するためにインドでiPhoneの生産体制を強化する。

さらにアップルは演算処理能力を高めた次世代チップの“M2”を発表した。それは、デバイスの性能に磨きをかけ、自社のクラウドなどのサービスの利用を増やすことによってエコシステムを拡大するという同社の決意の表れだ。ウェブ3.0の時代を迎える中でアップルがどのようにデバイスとクラウド事業の競争力向上を目指すかは注目に値する。グーグルも広告などの規制強化に対応して収益を伸ばすためにクラウドビジネスの強化を進めている。

米中の対立やウクライナ危機によってサイバー攻撃のリスクが大きく高まったことを踏まえると、安全性の高いクラウドサービス需要は高まるだろう。

IPhone Homescreen
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GAFAであっても「想定外の業績悪化」はありえる

今後、GAFAを取り巻く事業環境は一段と急激に変化する。世界全体で物価高騰と景気の後退が同時に進む恐れが増している。特に、ウクライナ危機などをきっかけに世界全体で物価が急騰していることは深刻だ。

その状況下、インフレ退治のために連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は利上げやバランスシート縮小を急がねばならない。金利が上昇し、金融市場は大きく不安定化する恐れが高まっている。GAFAのような有力企業であっても想定外に業績が悪化し、クラウドサービスの強化やメタバースの取り組みが一時的に鈍化する展開は排除できない。

そうした懸念が高まる状況下、各社はコスト削減を強化しつつ、新しい取り組みを進め始めた。メタはマイクロソフトとクラウド分野での戦略的な提携を強化し、関連する分野でのビジネスチャンスをより多く獲得しようとしている。アマゾンやグーグルもコストの削減を進めつつ、クラウド関連分野の事業運営体制を強化している。アップルは既存デバイスと自動車の新しい結合を実現するために自動車用アプリケーション“CarPlay”の開発も強化している。