「体感上昇率」は10%以上だが…

物価が上昇しているということを実感だけでなく、経済指標というデータでも裏づけをとったわけですが、上昇幅についてはまだ実感と合わないという方もいるかもしれません。

つまり、「物価が上昇しているというのはデータと実感が同じだが、感覚としては2%どころの上昇幅じゃない」ということです。なかには10%以上も上昇していると実感されている方もいるかもしれません。

この消費者物価指数というものは物価全般の指数であり、個別の価格ではないということに注意しなければいけません。また、経済指標と実感の違いの理由についてはのちほど説明します。

頻繁に買うものほど値上がりが著しい

経済指標のデータと実感に乖離があるという話について、もう少し深掘りしてみましょう。先ほど確認した6月分の消費者物価指数は「総合指数」が前年同月比+2.4%でした。2%というのがどれほどの物価上昇か、いまいちイメージしづらいですが、「生鮮食品を除く総合」の同+2.2%というのは消費税増税の影響を除くと13年9カ月ぶりの上昇率というのを見ると、歴史的な物価上昇なんだろうな、ということはお分かりいただけるかと思います。

しかし、2%というのは去年100円だったものが102円になるということで、このようにして数字で見るとたいしたことがないように思えますし、買い物していて実感する物価上昇は5%、モノによっては10%ぐらいのイメージかと思います。経済を分析する専門家の筆者も正直なところ、同じような感想を抱いています。それでは、なぜ経済指標と実感に乖離があるのでしょうか。

ここでは消費者物価指数をふたつの観点から分析していきます。ひとつは購入頻度別に品目を分けて、それぞれの物価上昇率を見るという方法です。マニアックな分析方法なので消費者物価指数のニュースを見たことがある人でも、このような分析結果は見たことがないかもしれません。

6月分のデータで分析をすると、「頻繁に購入」するものの物価上昇率は前年同月比+4.1%、「1カ月に1回程度購入」するものは同+4.7%となっています。一方で、「1年に1回程度購入」するものは同+1.0%、「まれに購入」するものは同+1.9%となっています(図表2)。

このように見てみると、私たちが実感として捉えるのは購入頻度が高いものの物価上昇率でしょうから、実感では5%ぐらい物価上昇しているという感覚と整合性が高くなるのではないでしょうか。