川上にいる中小零細企業に大ダメージ

さて、話を戻します。図表4の国内企業物価指数のグラフから他にも読み取れることがあります。それは、輸入物価指数の推移を見てみると、契約通貨ベースよりも円ベースでの物価上昇率のほうが大きく上昇しているということです。これにより、円安によって輸入物価が押し上げられているということが可視化されて理解しやすくなったかと思います。

森永康平『大値上がり時代のスゴイお金戦略』(扶桑社)
森永康平『大値上がり時代のスゴイお金戦略』(扶桑社)

国内企業物価指数は消費者物価指数と同様に5年に一度、基準年が改訂されます。基準年が2020年に変わったタイミングで需要段階別のデータが公表されなくなってしまったため、データが少しだけ古いまま更新されていないのですが、需要段階別の企業物価指数に注目すると、素原材料、中間財、最終財の順に物価上昇率が低下しています。これは、先ほど見た企業物価指数と消費者物価指数の乖離と同じ理由だと考えられます。

つまり、海外から素原材料を輸入して中間財に仕上げ、そこから加工をして最終財にして消費者に売るという川上から川下、そして卸売り、小売りという流れのなかで、素原材料を扱う中小零細企業が川下に向かうにつれ、規模が大きくなる企業に対して価格転嫁しづらい状況にあると考えられます。つまり、今回の物価高は中小零細企業の業績にも大きなダメージを与えているのです。

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