世間ができないことを代わりにやってみせる

2017年に公開したこの動画は約4800万回再生され、僕の代表作のひとつになった。

祭りくじをぜんぶ買うなんてことはまさに「やりたいけど、現実的にはできないこと」だ。ほんとうに1等は入っているの? でもじっさい検証するにはお金がかかる。それに祭りの露店ならではの雰囲気もある。そこにあえて踏み込むのはためらわれるだろう。

人々で混雑する祭りの日の屋台が並んだ通り
写真=iStock.com/JianGang Wang
※写真はイメージです

そこで僕が代わりにやってみせた。祭りくじをめぐる動画はこれまで3回投稿しているが、どれも1000万回再生を突破するキラーコンテンツとなった。

「知りたいけど、なかなかできないこと」もたくさんやった。かつて実写チャンネル開設直後にやったのは、ジュースの自動販売機を売り切れにしてみるという企画。1台の自販機にはジュースがぜんぶで何本入っているのか。売り切れにするにはいくらかかるのか。自分ではやらないが、やっている人がいたら見てみたいと思うはずだ。結果、視聴者の好奇心をうまく刺激することができた。僕の実写チャンネルで初めてバズった企画になった。

好感度と引き換えに金に物を言わせて差別化を図る

さかのぼれば、実写チャンネルのまえ、ゲーム実況チャンネルに取り組んでいたころから視聴者のニーズには敏感だった。そのとき僕がプレイしていた「実況パワフルプロ野球」(パワプロ)は無課金でもじゅうぶん楽しめるが、課金したほうが強い選手を育てやすい。とはいえ、多くの人にとって課金しまくるのは夢のプレイ。そこで僕が代わりに夢のプレイを実際にやってみせたのだ。

こういった企画が当たって、僕のゲーム実況チャンネルの登録者数は当時としては大台の1万人を半年で突破。軌道に乗っていく大きな足がかりになった。

「なるほど。おもしろい企画にするにはお金を使えばいいのか」と皮肉を言う人もいるかもしれない。それははんぶん正解、はんぶん不正解だ。

金に物を言わせるのは下品だ、はしたない。いまでも僕のもとにはそんな批判が届く。そうなのかもしれない。下品なのだろう。だから、金に物を言わせるというのは好感度と引き換えなのだ。好感度を捨てる覚悟がないと、お金をじゃんじゃん使ってみせることはできない。

おもしろい企画とは、すなわち差別化だ。ほかのだれかと異なっていることが大前提だ。だからそこにはつねに代償がつきまとう。お金がないなら、時間や気力や体力をありったけ費やさなければならない。一方、お金を使ってだれかを楽しませようとするなら、下品だとのそしりも免れない。

ようするに、ニーズに対してどこまで愚直になれるのか。どこまで代償を払えるのか。おもしろさとは、その勝負なのだ。