「コロナ禍での地方移住」は検討する価値があるのだろうか。不動産コンサルタントの長嶋修さんは「コロナ禍で期待された地方への人口流入はほとんど起きておらず、地方の衰退は今後いよいよ加速するだろう。地方移住には、資産価値がゼロまたはマイナスとなる『限界不動産』をつかむという巨大リスクがある」という――。
移住で人気の熱海市の人口は、むしろ減っている
「アフターコロナ」が叫ばれていますが、日本経済は危機から脱するどころか、いよいよ困難な局面に差し掛かっています。
日本の課題は枚挙にいとまがありませんが、中でも今後一挙に深刻化しそうなのが「地方衰退」問題です。
コロナ禍では「3密」を避けるためのリモートワークが叫ばれ、企業での導入が進みました。
そのため、業種によってはほとんどの仕事を自宅でできるようになり、首都圏から郊外、地方へ移住する動きが加速するだろう、と言われていました。
2020年に菅政権が、リゾート地などで仕事をする「ワーケーション」の推進を打ち出したことも記憶に新しいですが、そうした政府の旗振りもむなしく、地方への人口流入はほとんど起きていません。
昭和期に新婚旅行先として人気だった熱海市は、需要の減少で衰退に直面していましたが、コロナ禍によって首都圏からの人口流入が起き、衰退に歯止めがかかると期待されていました。
しかし、図表1に示したように、熱海市の人口は増えていないどころか、むしろ減っています。ワーケーションや地方移住で熱海市に流入する人口より、流出する人口や、死亡等での減少が上まわっているのです。