その影響は、黒海東岸に位置するジョージア(グルジア)や、ウクライナの南側に位置するモルドバなどにも及ぶだろう。ジョージアではもともと、欧米路線を支持する声が強く、国民の多くがNATOやEUへの加盟を求めてきた。だが、現在政権を握るのは、ロシアと関係が深い政党「ジョージアの夢」だ。

国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの報告書によると、同党は12年に実業家のビジナ・イワニシビリによって創設された。実業家といっても、1990年代にロシアの国有財産売却で財を成したオリガルヒだ。

ジョージアでは03年のバラ革命以降、親米的なミハイル・サーカシビリ大統領が権力を握っていたが、腐敗との戦いに手こずり、08年には南オセチアがロシアの侵攻を受ける一方で、NATO加盟が進まないなど、国民の不満が高まっていた。

民主主義を後退させた「ジョージアの夢」

そんななか、イワニシビリの潤沢な資金に支えられた「ジョージアの夢」が登場して、たちまち議会で多数派を獲得すると13年の大統領選でも同党の候補を勝利させた。

ジョージアの夢は、民主主義を後退させ、サーカシビリら政敵を投獄し、親欧米的な政策も打ち切った。今年7月にはイラクリ・コバヒゼ党首が、アメリカとEUはジョージアとロシアに戦争をさせようとしていると非難した。

だが、同党の活動はイワニシビリの財力に完全に依存している。そしてイワニシビリの財力は、ロシアに依存している。ウクライナでロシアが敗北し、ロシアが政治的にも経済的にも弱体化すれば、イワニシビリの政治的影響力も低下するだろう。そうなれば親欧米的なリーダーが登場したり、ロシアが実効支配するアブハジアや南オセチアがジョージアに復帰したりする可能性も出てくるかもしれない。

モルドバも同じような影響を受ける可能性がある。同国では20年12月に親欧米派のマイア・サンドゥ大統領が誕生して、さまざまな改革を進めてきた。だが、最近はウクライナ戦争で農産物の輸出が滞っており、親ロシア派が盛り返している。

モルドバ東端の沿ドニエストル地域は、ロシア系住民が多いことからロシアに実効支配されており、ロシア兵1200人が駐留する。ウクライナでロシア軍が善戦し、黒海の要衝オデーサ(オデッサ)まで到達すれば、そのすぐ西側に位置する沿ドニエストル地域のロシア駐留軍と連携して、モルドバ全体を脅かすかもしれない。