動画SNS「TikTok」は、なぜここまで人気になったのか。イギリス人ジャーナリスト、マシュー・ブレナン氏は「TikTokの成功要因には、『全画面高画質』『音楽』『特殊エフェクトフィルター』『パーソナライズレコメンド』という4つがある。特に短尺動画で『いいね』を多く集めて、別のアプリのコンテンツレコメンドに直接影響するのは大きな強みだ」という――。
※本稿は、マシュー・ブレナン著、露久保由美子訳『なぜ、TikTokは世界一になれたのか?』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
後発のTikTokはなぜ想像を絶するほどの成功を収めたのか
ティックトック(TikTok)のオリジナル版である中国の「ドウイン(抖音)」は、名前くらいは聞いたことがあってもすぐに忘れてしまうようなアプリだった。さほど重要とも思われていない分野の遅咲きとでもいおうか。
ほんの一瞬評判となり、いずれあっさり勢いを失ってインターネットの世界に埋もれ、躊躇なく閉鎖される運命の平凡な模倣アプリのひとつとして、目まぐるしく移り変わる熾烈な中国のインターネット業界で、それ以前の何千ものアプリのように捨てられ、忘れ去られるはずだった。
ところが、まったく予想外なことに、ドウインとその国際版であるティックトックは、またたく間に想像を絶するほどの成功を収めた。ふたつのアプリは、創業チームの遠大な夢のさらに上を行く世界的な現象となったのだ。いったい何が起きたのだろうか。
ドウインは、ショート動画作成アプリである「ミュージカリー(Musical.ly)」の模倣版として始まった。縦長全画面の15秒のショート動画で、画面を下から上にスワイプする、音楽主体のアプリだ。
中心となる体験は、2013年にパリの地下室で作られ、ミュージカリーが模倣した「ミンディ(Mindie)」のオリジナル版から変わっていなかった。ところが、ミュージカリーとドウインとでは、結果は大きく異なり、こんな疑問がわいてくる。
ドウインが成功し、ミュージカリーが失敗した要因はなんだったのだろうか?