「僕がやるべき仕事なのか」と自問自答し続けました
地球上には食事も満足に摂れない貧困状態にある人がたくさんいます。一方で、食べすぎによる肥満や生活習慣病に苦しむ人もいます。この理不尽な食の不均衡を解消し、先進国の肥満と途上国の飢餓を同時に解決する──それがテーブル・フォー・ツー(TFT)の目指すところです。
具体的な手段としては、社員食堂を持つ企業や団体に働きかけ、通常より低カロリーで栄養バランスのよい特別メニューを用意していただき、20円だけ値段を高くしてもらいます。その20円がわれわれの取り分となり、アフリカに送られるのですが、それは現地の子供たちが学校で食べる1食分の給食とちょうど同じ金額なのです。つまり、特別メニューを食べた人は、自動的に飢餓に悩むアフリカの子供たちに1食分を寄付したことになります。
2007年10月からプロジェクトがスタートし、提携先は240団体まで増えました。大部分が民間企業で、官庁や大学も参加しています。飢餓撲滅という社会貢献につながる一方、社員らのメタボ対策にもなるという一石二鳥の施策であることが、ここまで広がった大きな要因だと思います。
私は26歳のときにマッキンゼーに入りました。企業の組織変革プロジェクトに多数関わり、クライアントも喜んでくれて、それなりの充実感があったのですが、「僕がやるべき仕事なのか」という気持ちが払拭できませんでした。
入社6年目のとき、ニューヨークに1年間駐在しました。あるお金持ちの人と親しくなったのですが、その人があまり幸せそうではなかったのです。その人と比べたら、お金を持っていなくても自分の好きなことを追求し、尋常じゃない目の輝きをしている人が僕の知り合いには何人もいました。
もともとマッキンゼーに入ったときも明確な目標があったわけではありませんでした。お世話になったクライアントの社長に、「コンサルタントという仕事はしょせんアドバイス業。実業の世界を経験しないと組織というのはわからない」と言われたのがきっかけで同社を辞め、松竹に移りました。が、そこも安住の地ではなかった。「僕がやるべき仕事なのか」という意識が一層強くなっていました。