キンドルの到来は
衰退する日本への21世紀の「黒船」

キンドルは日本にとって一種の「黒船」だと思うんです。なぜ日本でこれが実現しなかったのか。技術力は十分に持ちながらも、みすみす黒船の到来を許してしまったのではないでしょうか。

かつて栄華を誇った「ものづくり大国ニッポン」の抱える現在の病の原因は、すでに世界にとっての「ものづくり」が、ハードではなくシステムづくりに移行しているということです。キンドルにしてもハードうんぬんより、このシステム全体を生みだしたことが画期的なのです。

たとえば、僕はキンドルが日本のどこの携帯会社と提携しているのか知りません。知る必要すらないところがすごい。既存の商品設計であれば、キンドル本体を買うほかに、日本の携帯会社と個別に契約してくださいと、いろいろ面倒な手続きが必要になってくるはずです。しかし、ユーザーに背後のビジネスを一切感じさせず、負担もさせない。

キンドルを絶賛している僕ですが、別にアマゾンびいきでもアメリカびいきでもありません。むしろ、日本びいきだからこそ悔しいのです。優れたものをつくりだす潜在能力を持っていながら、ここ最近ずっと停滞している日本の知的デフレ現象に対して、「日本のビジネスマンよ、立ち上がれ!」といいたいのです。

ガラパゴス化した過剰機能を誇るのではなく、グローバルなユーザーが本当に必要としているシステムを、他国に先駆けて構築するにはどうしたらいいのか。それこそ国をあげて考えなくては生き残れない時代なのです。何かにつけ「ここは日本だから」というような人は、さっさと社会から退場してほしいと思う。

いまの日本は、かつての鄧小平の改革開放路線以前の中国のような様相を見せていると僕は思っています。いまでこそ高い経済成長率を誇る中国にも、かつて長い停滞の時期がありました。

要するに、社会システムの多くがすでに消費期限切れを迎えているのです。外から見たら「そりゃ、伸びないよな」というのが一目でわかるようなマインドセットになっている。たとえば、若者の格差を拡大させた元凶の一つである、企業の「新卒一括採用」などはもはや人権問題ですし、キンドルのような電子デバイス出現に対する日本の出版業界の遅々とした対応にも疑問を感じています。

キンドルのほかに、パソコン、デジカメ、ICレコーダーなどをいつもリュックに入れて持ち歩く。

僕はもともと最新のデバイスやガジェットを使うのが大好きで、新しいものが出るとすぐに購入します。よく「ITは苦手で」という人がいますが、新しいものに拒絶反応を起こしていてはグローバル時代に勝ち抜くことなどできません。学生にも、「四の五のいわずに、とっとと持て」と勧めています。常に最新の空気を吸っていないと、時代に対応できないという思いがあるからです。

英語に関しても同じです。英語ができるかどうかで、この先のビジネスマン人生はまったく違ったものになるはず。キンドルには英英辞書機能がついていて、わからない単語は、電車で立ったままでも調べられる。わざわざ日本語版が出るのを待つことはないと思います。

TOEICを受けるくらいなら、キンドルで勉強したほうがいい。「野性の英語」を身につけるために、まずは量を読むことです。どうせ読むなら、面白い物を読んだほうがいいでしょう。キンドルを使えば簡単に実現します。

※すべて雑誌掲載当時

(三浦愛美=構成 永井 浩=撮影)