強固な情報交換のネットワークを持つ盗撮マニアたち

盗撮を含めてネット上の実情に詳しい人物は「ツイッターが国内で認知、一般化し始めた11年前後から既にこうした問題を把握していた。アスリート盗撮に限って言えばその中でもごく一部のマニアのものであり、撮影にそれなりの技術や機材を要する」と指摘。そのうえで盗撮する側の目的は「性的嗜好しこう」「金儲け」「個人的な不満の解消(復讐ふくしゅう心)」の3つに大きく分かれると分析する。

「盗撮」は「逆鳥」「逆さ鳥」などの隠語があり、全国のどこでも小さなイベントがあれば、盗撮マニアが集まるといわれる。情報交換するネットワークは水面下で強固につくられ、現場で撮影カメラマンをスカウトすることもあるという。

スマホの普及を背景にした盗撮の増加やネットビジネスの現状については「それ(盗撮写真)を売りにする紙媒体は昔から存在しているため、技術の発達により撮影も販売も「個人」が簡単にできるようになっただけ。需給状態や市場構造が変わったわけではないと考える」と説明した。

暗い所でスマホを使用する人の手元
写真=iStock.com/Mindful Media
※写真はイメージです

1980年代から撮影しているという男性の盗撮サイトでは性的画像の定義や近年の取り締まり強化に疑問を呈し、定期的な「作品」のリリースを「知恵と工夫が必要なマラソンのような営み」と表現。「表現の自由」を訴える記載もあった。

10年以上前から盗撮画像は売買されていた

11年11月、千葉市の幕張メッセで行われた新体操の全日本選手権。観客席の最前列に3人組のカメラを持参した学生がいた。体操関係者は「明らかにカメラを構える角度や撮影の方法がおかしかった。典型的なカメラ小僧タイプだった」と当時を振り返る。

かつて体操界は観客の撮影を許可していたが、一部雑誌やネットで選手の望まない画像や動画が掲載される被害が相次ぎ、00年から撮影は申請制に移行。04年からは観客による撮影の原則禁止を定めた。しかし、当時のケースは「規制の網」をすり抜けて会場入りした形だった。

この関係者によると、もう一人の大会関係者と一緒に学生を一人ずつ別室に呼んで「何を撮っていたんだ」と問いただすと、あっさり非を認めたためカメラのフィルムごとすべて抜き取ったという。「初犯だった」ということで、警察に突き出すことはしなかった。

当時、ネット上では無断で撮影された盗撮画像が売買されることは今ほど深刻化していなかったが、体操関係者は「学生同好会の彼らは各競技会場に手を替え品を替えてやってくる。規制をかけてもマニアにとってはやめられない。罰則をもっと厳しくする必要があった」と10年以上前から続く問題に疑問を投げかけた。

そんな時代からスマホの普及やネットビジネスの拡大に伴い、盗撮を巡る動きも大きく変化したということだろう。アスリート盗撮を取り巻く環境も急速に変わった現実がある。