緩い基準の、余裕資金とは?

緩い基準の余裕資金は、「当面使わないお金」です。

一般的には、「半年程度の生活費や、近々必要となる教育資金など」以外のお金となります。ですので、数年先のリフォーム資金や、数十年先の老後資金も、この緩い基準でいえば「余裕資金」となります。

そしておそらく、世間一般でも、この基準で余裕資金を捉えている人は多いでしょう。

実際、銀行や証券会社などは、「眠っているお金は、投資で増やそう」「将来のお金は、じっくり投資で育てよう」などと、当面使わないお金(緩い基準での余裕資金)は投資しようとアピールしています。当面使わないお金であれば、長期分散投資をすることでリスクを減らし、たとえリーマンショックやコロナショックのようなことがあっても、長期的には預貯金を上回る収益を上げることができる、と。

緩い基準では、“私は”投資しない

しかし私は、この緩い基準での余裕資金は、それは余裕資金とは考えず、投資には回しません。

それがたとえ、長期分散投資であっても、です。

なぜなら、ちょうど資金を必要とするタイミングで、リーマンショックやコロナショックのような大暴落にかち合ってしまっては、人生設計は大きく狂ってしまうからです。

イエス、ノーと書かれた壁の前に立つ人
写真=iStock.com/triloks
※写真はイメージです

たしかに長期分散投資であれば、そのような大暴落があっても、長期的視点においては、いずれは回復する可能性は高いです(実際、回復しています)。しかし、いずれ回復するとは言っても、資金が必要なタイミングで資産が大きく毀損きそんしてしまっては、人生設計の屋台骨が揺らいでしまう可能性があるのですから。

ちなみに、私がまだ余裕資金のスタンスを確立しておらず、資産の大半を投資に回していた頃、リーマンショックで大損を被りました。そのときはまだ30歳前後で、それほどお金が必要ない時期だったので、なんとかやり過ごすことができ、その後の相場回復で一息つくことができました。

しかし、もしそれが今のタイミングだったなら、車購入やリフォームの計画が大きく狂ってしまい、いろいろ大変だったかと思います。

また、長期分散投資の「長い目で見れば増える」についても、これはあくまでも過去のデータ(実績)です。今、新型コロナやウクライナ情勢など、世界規模で大きな変化が起きている中、これまでのデータ(実績)が通用しないフェーズに突入している可能性も否定できません。世界情勢の不透明感は極めて高く、投資も何が起こるかまったく分からない、この一言に尽きます。

そんな中で、それが遠い将来であっても「目的の決まっている資金」を投資に回すことは極めてリスクが高いと、私は考えます。