ママ友から精神的な支配を受け、母親が5歳のわが子を餓死させた事件。実刑判決を受けた母に続き、ママ友の裁判が8月に始まった。多くの人間関係の悩み相談などを受けている産業カウンセラーの川村佳子さんは「職場でも友人間でも1対1の関係がこうした異常な支配・服従関係になることはありえない話ではない」という――。
薄暗い廊下で膝に顔をうずめている母親に、正座で向き合う少年
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ママ友に“洗脳”され、5歳児を餓死させた40歳母親

母親が当時5歳の息子を餓死させた――。

2020年、福岡県篠栗町で起こった「福岡・5歳児餓死事件」。母親がママ友から精神的支配を受けた犯行として、日本社会に大きな衝撃を与えた。

母親の碇利恵被告(40)は、今年6月に行われた第一審で、保護責任者遺棄致死の罪に問われ、懲役5年の実刑判決を言い渡された(控訴中)。

一方、母親を精神的に支配していたとされるママ友・赤堀恵美子被告(49)は8月下旬から裁判員裁判が始まり、「指示していません」と法廷で発言。碇被告とその家族の生活全般を支配し、5歳の男の子を餓死させたなどとする起訴内容を全面的に否定、無罪を主張した(審理継続中)。

事件の詳細は、これからの公判で明らかになっていくことになると思うが、この事件が報道された当時から、産業カウンセラーとしてこの2人の被告の異常な関係に注目していた。

「なぜ一人のママ友の言いなりになって、大切なわが子を餓死させるまでに至ってしまったのか?」
「わが子を餓死させる前に、少しでも疑ったり、だまされたりしていることに気づけなかったのか?」
「せめてまわりの人に相談ができなかったのか?」

事件を知った人の中にはそう疑問に感じた人も多いだろう。

ただ、産業カウンセラーとして、多くの女性同士の人間関係の悩みやトラブルの相談を受けてきた身としては、ありえない話ではないと考えている。それどころか、近所付き合いや会社内など人間関係のあるところで頻発している。