“業態換え”で減少ペースは一度落ちたが…

その後、ファミレス店舗の減少ペースはいくぶんか鈍化した。2022年3月末の店舗数は8545だった。感染再拡大が落ち着き、動線が徐々に修復されたことは大きい。また、ファミレス各社が急速に事業変革に取り組んだことも店舗閉鎖ペースの鈍化につながったと考えられる。

具体的には、焼き肉、唐揚げやカフェなどに業態を転換する店舗が増えた。和洋中などさまざまなメニューを扱うファミレスよりも、焼き肉のように特定のメニューに絞ることは物流をはじめコスト削減に有効と考えられる。また、フードデリバリーやテイクアウトなど需要の変化への対応も進んだ。配膳ロボット導入など人手不足を克服して店舗運営の効率性を向上させるためのデジタル化も加速している。

しかし、2022年4月以降はファミレスの店舗閉鎖ペースが再度加速している。6月末の店舗数は8420に減少した。帝国データバンクは2023年3月末時点での店舗数は8000程度に減ると予想している。ファミレス業界全体で、企業が生き残りをかけてさらなるコストカットに取り組む状況が鮮明だ。

世界的な物価高が業界を直撃している

4月以降の店舗閉鎖に大きな影響を与えた要因の一つに、世界的な物価上昇がある。2月24日のウクライナ危機以降、ロシアが世界各国に供給してきた天然ガスなどのエネルギー資源、小麦などの穀物、肥料などが減少した。世界経済はブロック化し、グローバル化とは反対に脱グローバル化が加速している。

米国や欧州各国など西側の自由資本主義諸国はロシアに対する金融・経済制裁を強化した。ロシアは報復に天然ガスなどの供給を一段と絞った。各国企業が需要の変化に対応して供給量を調整し、事業運営の効率性向上を目指すことは難しくなった。世界全体で供給が需要を下回り始め、物価上昇圧力が急速に高まった。

それによって、わが国はかなり厳しい状況を迎えている。わが国は経済運営に必要なエネルギーや鉱物資源が乏しい。足許では、わが国が輸入する天然ガスや石炭などの価格の上昇が鮮明だ。小麦などの穀物も輸入に頼っている。それに加えて、わが国では日本銀行が異次元の金融緩和を続けている。