もうなかば諦めの心境である

第7波の勢いが止まらない。発熱外来の予約枠は朝の受付開始とともに瞬く間に満了となってしまう状況だ。お盆休みも明けて、発熱外来には「帰省先で感染してしまったようだ」という患者さんも相当数いる。この現状、そして現在主流と言われているBA.5の次にはBA.2.75の流行が待ち構えていることを思えば、まだまだ外来診療の逼迫ひっぱく状態からは解放されないのだろうと、なかば諦めの心境だ。

ノートパソコンの上に聴診器
写真=iStock.com/BrianAJackson
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私が主として診療に関与する診療所は発熱外来も設置しているが、高血圧や糖尿病といった慢性疾患の通院患者さんも少なくないため、発熱者の診療には外来診療時間枠の一部を活用するしかない。午前でいえば、9時から12時までの最後の1時間をそれに充てることとなる。

発熱者の診療は医療機関によってもそのやり方は異なるだろうが、私の勤務するところでは基本的には対面で診療する。患者さんに一切会わず、検査のみあるいは投薬のみとする医療機関も少なくないようだが、前回記事にも書いたように、そのような診療方法では誤診や見落としのリスクが高まる。よって流れ作業的に検査投薬のみを行うのではなく、可能な範囲でしっかりと診察するというのが、ここの担当医に一致しているポリシーだ。

政府は「全数把握」の見直しを検討

しかしそのように診療のクオリティーを一定程度担保しようとする場合、無限ではない時間とマンパワーをかんがみれば、どうしてもアクセスは犠牲にせざるを得ない。すなわち発熱外来で受け入れる人数を制限せざるを得なくなるのだ。朝の受付開始と同時に電話が鳴るが、発熱外来枠の1時間に診療できる人数は最大限に頑張っても15人が限界だ。詳細なデータをとっているわけではないが、おそらくその3倍以上の問い合わせは毎朝受けていると思われる。なんとも心苦しいことではあるが、仕方がないのが現状だ。

もちろん逼迫しているのは私の勤務先ばかりではない。そして多忙を極めているのは診療を直接担当する医師や看護師だけでもない。受付業務や会計、そして感染者の登録業務を行う事務職員の負担は、内部を知らない人には想像もつかないほど大きなものとなっている。

こうした医療現場に重くのしかかっている負担を緩和するために、政府はこれまで行われてきた新型コロナウイルス感染症の「全数把握」を見直し、発生の届け出を都道府県の判断で高齢者らに限定できるようにする方針を表明した。