これまでの売り場構成は「売り手都合」だった

【田中】山本社長には、Amazon創業者のジェフ・ベゾスの話やDay1の精神についてよくお伝えしておりますが、今のお話を聞くと信頼と誠実が大事なのはもちろん、加えて一部に大企業病的な面も見られるということでしょうか?

【山本】はい。組織の壁が大きくなり、自分の担当範囲だけやればいいという考えも生まれていたと思います。その壁を取り払うために、おそらく私が入社以来全く変わっていないであろう店舗組織の大変革をやろうと思っています。この5年間で約80店舗を改装してきた中で、お客さまの買い方や店舗の使われ方が変わってきていると肌で感じています。そういったニーズに応える売り場やサービスに切り替えます。

店舗の都合で売り場を構成してしまうと、お客さまにとって必要な売り場はできません。そこで、食品部門にあった6つの部門を、3つに再編します。組織を変えることが目的ではなく、働いている人間の仕事の中身、優先順位を変えたいというのが一番の目的です。自分たちの範囲だけの仕事やいわれた仕事だけをやるのではなく、少しでも組織の壁を取り払いたいと思っています。

【田中】具体的にいうと生活シーン別の売り場づくりを進めるということですね。これに対するこだわりはどこにあるのでしょうか?

食品売り場のレイアウト
写真=iStock.com/mathisworks
※写真はイメージです

「青果→肉・魚→総菜売り場」のスーパーはもはや不便

【山本】食品の例でいいますと、現在は肉売り場と魚売り場に分かれていますが、肉だけを買って帰られるお客さまはあまりいらっしゃらず、皆さん献立をイメージしながら買いものをされるわけです。スーパーマーケットを思い浮かべてもらえればわかるかと思いますが、果物野菜売り場から入って、肉と魚の売り場があり、一番奥に総菜売り場がある。一周まわってレジまで行ってもらうことで、少しでも多くの商品を買っていただこうという狙いです。

しかしそれでは、食材から献立を考えて買いたいという方も、総菜や簡便な商品で手軽に済ませたいという方も、同じルートで同じように買わなければいけません。それは売り手都合の発想です。

例えば、野菜コーナーで今日はいいキャベツがあるからそれで料理をしようと思い手に取り、その後魚売り場に行ったら美味しそうな魚があった。その時に魚メインの献立に変えようとすると、また野菜売り場まで行ってキャベツを戻す必要があります。このように不便な売り場づくりをすること自体がおかしいと考えています。

それならば、素材なら素材だけを1カ所にまとめ、目に見える範囲に野菜も魚も肉もあって、献立の提案もできる売り場をつくる。魚と肉と野菜を一つの括りにし、一人の責任者のもとで売り場のメニュー提案をやったほうがいいと考えています。