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大事なのは価値観の混ざり合い

公的組織に限りませんが、組織の生え抜き人材ばかりの職場では、どうしても独自の風土や価値観に縛られがちです。適度に外部から人材を入れ、価値観をシャッフルすることの意義や重要性は、今後も僕は強調したいですね。

ただし、これを実践した経験者から言うと、実に大変な作業です(笑)。言うは易し、行うは難し。成功例も多いが、“失敗例”も少なくない。それでも、やはりやらなくてはならないというのが僕の結論です。そうでなくては、日本の至るところで頻発している目詰まりは解消しませんから。

特に政治行政分野には、外部人材の登用が必須です。霞が関の中央省庁も、地方自治体も同じで、民間の常識が通じません。政治家や役所組織では民間企業では考えられないような“常識”や“慣例”がまかり通って、しかも皆それに疑問を抱かない。

例えば政治家に対する感覚もそう。政治家だって本来、1つの職業です。偉くもなんともないはずなのに、なぜか「偉い立場」だと本人も役所職員も周囲も錯覚してしまっている。もちろん全員とは言いませんが、驚くほど横柄な態度をとる政治家も多いです。たしかに政治家には権限があります。官僚からすれば、議員に「うん」と言ってもらわなくては物事は先に進まないし、各種業界団体からすれば、予算や補助金を回してもらうために、やむなく政治家に頼むこともあるでしょう。

だけど、悪しき慣例や政治家が偉そうに振る舞うことによる弊害が大きすぎます。本来、極めて優秀なはずの官僚たちが、組織のルールや慣例、政治家への過度な配慮に縛られて、本来の仕事ができなくなってしまっています。能力が発揮できなければ、疲れ果てるか、意欲ある若者は他の分野での活躍を志して離れていきますよ。

やはり、どこかのタイミングで、「公的機関の常識は、世間の非常識」と誰かが伝える必要があります。そしてそれができるのは、外の世界を知っている外部人材しかいません。

働き方も、公的機関と民間企業では大きく違います。民間では成果を出し売り上げを伸ばさなくては給料やボーナスに響き、最悪の場合は倒産しかねませんが、公的機関に倒産はありません。不景気だろうと、ミスをしようと、クビや給与カットもまずない。

ただし、です。外部人材を招く場合は、「その組織(例えば役所)のやり方がダメで、人材もいないから、外部から人を連れてくる」と受け取られるメッセージをトップや経営陣が出してはいけない、ということも強調しておきます。これは僕自身の失敗点、反省点を踏まえたうえでのアドバイスです。

今思うと、僕は外部人材を公募する際に上記の点を強調しすぎ、役所職員の多くに誤解を与えてしまったようです。そのようなメッセージが出されれば、外部人材側は組織内部の人材を見下しますし、内部の人は外部から来た人を敵と認識してしまいます。