「もう中学生」に見るやわらかコミュニケーション

もう1つ、人間関係全般にかかる傾向として押さえておきたいのは、「やわらかコミュニケーション」というインサイトです。

原田曜平『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)
原田曜平『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)

Z世代は人にやさしい、やわらかいコミュニケーションが大好きです。SNS上での言い争いや炎上騒ぎを目にしているZ世代は、その反動で人の価値を否定しない、衝突を避けるコミュニケーションを身につけています。

「否定しないツッコミ」でお笑いコンビの「ぺこぱ」がブレイクしたのは象徴的ですし、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎も、敵である鬼に同情し、涙を流しました。

最新の事例で言えば、芸人の「もう中学生」さんの大ブレイクだと思います。独特なボケはおじさんたちの理解を超えているかもしれませんが、いつも一生懸命でかわいらしく、なにより絶対に人を傷つけないやわらかさがあります。こうした時代の空気のせいか、毒舌で再ブレイクした有吉弘行さんも相当やわらかくなっているように見受けられます。

毒舌にもかかわらず“ひろゆき”が人気の理由

こうなると、広告にも柔らかさが求められます。何かを否定する広告は敬遠され、むしろ競合商品まで肯定するやわらかさが好感を呼んでいます。例えば、山形のお米「雪若丸」のテレビCMです。俳優の田中圭さんが「日本のお米でおいしくないものはない」が「あえていうなら雪若丸が好き」と語るものです。雪若丸をアピールしながらも、そのライバルである日本のお米全般を褒めているところが、やわらかさの所以です。

そんなことを言うと、「じゃあ、“ひろゆき”の人気の高さはどう説明するんだ? 毒舌で人気じゃないか」とツッコミを受けてしまうかもしれません。なるほど確かに、Z世代の若い子はひろゆきさんが大好きです。

しかし私の分析では、ひろゆきさんもまたやさしいのです。毒舌といえば毒舌ですし、面と向かって誰かを論破する強さもありますが、彼が戦いをしかけるのは、いつも自分より強い誰かなのです。

最近は、企業の社員が出演して自社をPRするYouTube動画が増えています。そんな場面でも、やわらかい言葉づかいを心がけましょう。

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