「仲良し親子」の過剰ぶりを描け
SNSが私たちにもたらした変化は数々ありますが、そのうち最大のものは人間関係ではないでしょうか。
例えば、LINEで親子がつながるようになり、コミュニケーション量が増えたことで単純に親子関係が仲良くなっています。友人関係も変わりました。一昔前なら、学校の卒業とともに関係がリセットされたものですが、今ではSNSでずっとつながっていられます。
このような「親しい人間関係の変化」という若者インサイトをきちんと描けないと、SNS広告・SNS広報は「時代遅れ」感が一気に出てしまいます。
若者たちの新しい人間関係をリアルに描いた広告をいくつかご紹介します。なかにはテレビCMもありますが、そこに隠れているインサイトはSNS広告へも応用が効きます。
例えば「過剰な親子のコミュニケーション」を描いたCMがバズっています。PayPayのテレビCMは次のようなものでした。男友達とカフェで勉強をする娘。カフェの外を通りかかった父親は、娘に「カフェ代 がんばれ!」というメッセージと共に、ペイペイで1000円を送金。メインコピーは「そのお金は、お金以上だ」――。
「若い子は親を疎ましく思うはず」はもう古い
私たち「おじさん」の感覚からすると、この親子の仲の良さは相当「過剰」です。というのも、かつて親子関係はもっと距離が遠いものでした。思春期になると子どもは親を疎ましく思うのが普通。特に娘は父親に嫌悪感をいだき、距離をとりたがる傾向がありました。
ところが、Z世代は違います。Z世代は親に反抗しないどころか親と親しくしたいのです。この感覚を見誤り、「若い子は親を疎ましく思うはずだ」と思いこんでいると、Z世代に刺さる広告はつくれません。むしろ、過剰なぐらいに仲の良さを強調する必要があります。
同様に、孫と祖父母の関係も親しくなっています。「若者が詳しいデジタル機器やサービスについて祖父母に教える」シーンを描いた広告などは象徴的です。昔なら、孫が祖父母に教わるばかりでしたが、今では孫が優位に。また、頑固できびしい祖父母が減り、孫にやさしい祖父母が増えました。