薬物乱用者しか知らない絵文字の意味

写真3に目を転じると、そこにはさまざまな“絵文字”が並んでいます。

【写真3】スクリーンショット
【写真3】(『スマホで薬物を買う子どもたち』より)

これが最近のトレンドです。左端の「(アイスクリーム)」は覚醒剤。つまりは、「覚醒剤=アイス」の隠語にひっかけた絵文字なのです。それでは、その隣の「(自転車)」が何を指すか分かりますか。

自転車は俗に「チャリンコ」あるいは「チャリ」と呼ばれます。そして、ここで言う「チャリ」とはコカインの隠語。ハリウッド俳優のチャーリー・シーンがコカイン所持容疑で逮捕されたことに由来するとされます。要は、チャーリーからチャリという語呂合わせなのですが、本人が聞いたらショックを受けるかもしれません。

同じく、「(鼻)」もコカインの隠語です。コカインは鼻孔から吸引する“スニッフィング”が主流なので、この絵文字がシンボリックに使われているのでしょう。

また、「(虹)」は、幻覚剤・LSDのこと。視界が極彩色のサイケデリックな世界に包まれることから虹の絵文字が用いられます。LSDは、その溶液を染み込ませた約6ミリ四方の紙片が流通しているため、「紙」という隠語も使われ、「(紙)」で表示されることもあります。その右横の「(ブロッコリー)」は「野菜」の意味で、大麻を指します。たまに「八百屋」という単語も目にしますが、これは“野菜を販売する業者”、つまりは大麻の密売人です。

MDMA(錠剤)は、「(バツ)」が表示され、粉末型のMDMAは「(カプセル)」。大麻リキッドは、液体の入ったボトルを意味する「(試験管)」や「(蜜つぼ)」が使われます。「(キノコ)」はマジックマッシュルーム(幻覚キノコ)で、注射器の場合はそのものズバリ「(注射器)」をよく見かけます。

このように、ネット上の隠語や絵文字は日々複雑化し、密売人との連絡にはほとんどの場合、テレグラムなどの秘匿アプリが使われます。私たち中高年にはとても解読できない記号でも、デジタルネイティブの若者たちはすぐに理解してしまう。

密売人は「押し」の言葉で検索している

もう1枚、写真を紹介します。これは客からの投稿です。

【写真4】スクリーンショット
【写真4】(『スマホで薬物を買う子どもたち』より)

〈8月31日に都内 千代田区辺りで、お野菜手押し出来る方探してます!〉〈都内で、信用高いpさんいましたらご紹介くださいませ‼〉と書かれていますね。

ここまでの内容をご理解頂いた読者の皆さんであれば、〈8月31日、千代田区内で大麻を手渡し(直取引)してくれる人を探しています〉〈都内で信用できる密売人さんを紹介してください〉という意味になることは容易に想像がつくはずです。

「pさん」とはプッシャー(pusher)、つまり密売人を指します。アメリカを筆頭に英語圏で使われるスラングで、『Pusher(麻薬密売人)』というタイトルの犯罪映画をご存知の方もいるかもしれません。