なぜわかるかというと、僕自身がそうだったからです。大学卒業後に司法試験に合格し、法律事務所に所属。その1年後の28歳には独立し、自分の事務所を立ち上げました。早い段階で独立できたのは、在学中から「仕事の九九」や「マネジメントの九九」を意識して勉強してきたからです。

あの頃は司法試験対策に加え、簿記や会計の基礎、経営論やマネジメント論も読み漁りました。取引先のお客様と接したときに、どういう言葉遣いをすべきか、おごってもらったときにはどういう形でお礼をするのか、社会人としての一般マナーも、意識して身に付けてきたつもりです。もし、大学時代にそうした意識を持たず、漫然と過ごしていたら、もっと違う30歳を迎えていたでしょうね。

自分の能力を高めることを一番に考えるべき

先日、僕の長女が転職しました。彼女なりに「3年」という目標期間を定め、「何を学ぶのか」の課題をクリアしてのステップアップです。もちろん職場に貢献し、しっかり話し合っての円満退職だと聞いています。クリエーティブな職種だという理由もあるのですが、次の職場では給料も上がり、週休3日という、彼女の求める働き方を手に入れました。父親の僕が「1つのところにずっと勤めるべきだ」という価値観ではなく、「自分の能力を高めることを一番に考えるべきだ」と言い続けてきたから、その考え方を実践してくれたのだと思います。もっとも、僕には「今度転職するから」と事後報告だったんですけれど(笑)。

ところで、どれくらいの年数を勤めたら、転職の時機なのか。「石の上にも3年」という言葉がありますが、僕は年数にこだわる必要はないと思います。大切なのは費やす時間ではなく、「課題・ステージ」です。仕事のタイプや質により、目標となるスキル・領域の習得期間も異なるでしょう。

転職は、自らの力を確認し、それを高める絶好のタイミングです。「自分はどの領域で活躍したいか」「今、何ができるか」、そうしたスキルや能力の棚卸しから始めてみてください。すると不足している能力は何かが見えてきますから、その能力を上げることで次の職場にチャレンジすることができるでしょう。あるいは、能力を身に付けるために、現在の職場よりも適した環境へ移るという決断もできるのです。

他方、このように自分自身を客観的に見ることができず、給料や福利厚生などの待遇や、現職よりも良好そうな人間関係といった外的要素に釣られて転職を考えるようだと、いつまで経っても「青い鳥」を求めて居場所を転々とするだけになるでしょう。

自分の能力を付加価値と言い換えてみると、付加価値が上がれば、転職にともない(転職しなくても)給料や待遇といった報酬は上がっていきます。よりよい待遇を求めるには、自分の能力開発に励むことが王道であり、近道でもあるのです。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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