※本稿は、伊藤由美『できる大人は、男も女も断わり上手』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
「大丈夫です」の使い方に感じる違和感
これはビジネスに限ったことではありませんが、会話のなかで頻繁に使われる「大丈夫です」という言葉に違和感を覚えることがあります。依頼や誘いを断わる、辞退する、遠慮するというケースで「大丈夫です」という言葉を使う人が多いんですね。
「大丈夫」が、「No Thank You」という意味合いで使われている——みなさんにも覚えがありませんか。若い人の間でとくによく使われている表現のようですね。ウチのお店でも、
といった会話をテーブルで耳にしたことがあります。「大丈夫」とは本来、「OK」の意味ですから、この場合、普通に考えれば「飲めます。いただきます」という意味に取れます。でも、最近の「大丈夫」にはまったく逆の「NO」の意味もあるわけです。
使い方を間違えると悪い印象を与えてしまう場合も
そちらの意味に取るなら「ごめんなさい。せっかくですが遠慮します」と、すすめを断わるフレーズになってしまいます。まあ、お酒の席での笑い話ならば目くじらを立てることもないのですが、これがビジネス関係で、上司や取引先などが相手となると話は少し変わってきます。例えば、
部下「大丈夫です」
さあ、この部下は、「飲みに行けるのか」それとも「断わっているのか」、どちらでしょう。本来の意味ならば「大丈夫=OK」ですから「行けます」ということになります。ただ、これを「大丈夫=遠慮いたします」という意味に解釈すれば「行けません」と断わっていることに。
同じ「大丈夫」でも、その意味が180度違ってきます。また同様に、「結構です」にも肯定的と否定的の2つの意味があります。言い回しの違いによって「優れている」や「問題ない」という意味になる場合もあれば、文脈によっては「必要ありません」「要りません」といった断わり文句になることもあります。
こうしたダブルミーニングの「大丈夫」「結構です」は、話し言葉として通用してはいますが(とくに「大丈夫です」は若い世代に多く見られます)、使い方を間違えると悪い印象や誤解を与えてしまうことにもなりかねません。あいまいな表現ゆえに、とくにビジネスの場では相手に対して失礼になることもあります。