化粧品やサプリメントに含まれる「アンチエイジング物質」は、その多くが植物由来だ。なぜ植物はそうした成分を持っているのか。静岡大学大学院の稲垣栄洋教授は「それは自ら動くことのできない植物ならではの生存戦略だ」という――。
※本稿は、稲垣栄洋『生き物が老いるということ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
老化を防ぎ、美容を維持する「アンチエイジング物質」
老化を防ぎ、若返りを図ることを「アンチエイジング」という。エイジング(加齢)にアンチ(対抗)しているという意味だ。
そして、そのような抗老化の効果がある物質をアンチエイジング物質という。
世の中には、さまざまなアンチエイジング物質があふれている。テレビを見ればアンチエイジング商品のCMが繰り返し流れ、デパートやドラッグストアでも、アンチエイジングのサプリメントが、ところ狭しと並んでいる。
このアンチエイジング物質の重要な効果が、「抗酸化」である。
私たちの体は、酸素呼吸をして生命活動を行っている。
しかし酸素は、物質を酸化させて錆びつかせてしまうものでもある。そして、酸素呼吸を行う生命活動の中で発生する活性酸素は、さらに酸化させる能力の高い毒性の高い物質なのである。その活性酸素は、体中の細胞を傷つける。ゆえに、病気や老化を防ぐためには、この活性酸素を取り除かなければならないのである。
この活性酸素を取り除く働きをするのが、酸化を防ぐ抗酸化物質である。
もちろん、人間の体の中にも、活性酸素を取り除く抗酸化物質は存在する。
しかし、人間の体内活動は活発で、活性酸素を取り除ききれなくなってしまう。これが、老化やさまざまな病気の原因となっていると考えられているのである。
そこで老化を防ぎ、美容を維持するために登場したのが、「抗酸化物質」なのである。