幼少期からみんなの前で「自分をさらけ出す」ための教育

子どもたちを育てる中で、このような鋼の自己肯定感を育む環境が幼少期からあることを感じてきた。

娘がシリコンバレーにある保育園、そしてサンフランシスコの幼稚園、小学1年と、3年続けて毎年、学年が始まってすぐの9月頃に同じような宿題が出た。その名も「All about me」プロジェクト。

写真や絵、文字を使って、自分の家族、自分の好きなもの、習い事などを1つのポスターにし、クラスのみんなの前でそのポスターを見せながら、自分について語るというプロジェクトだ。

保育園児、幼稚園児が、写真を印刷したりすることはできないので、当然親も一緒に取り組むプロジェクトになる。娘はその当時好きだった絵本やおもちゃ、仲良しだった友達の写真を貼りたいと言う。

またお母さんは日本人、お父さんはアメリカ人だから、日本を表すものとアメリカを表すもの、そして家族の写真を貼りたいとも言う。当時習っていた水泳や体操の写真も貼った。

その頃好きだった色で枠を書いたり、お花を描いたりもした。出来上がったポスターは、幼かった娘の身長ぐらいの幅のかなり大きなものになった。

こんな手作りのポスターを子どもたち一人一人が嬉しそうに学校に持ってきて、みんな得意げに、クラスメートの前で自分のことを話す。そして拍手してもらう。

娘が通った幼稚園と小学校はLGBTQ(性的少数者の総称の1つ)に寛容的なサンフランシスコにあったので、当然、お母さんが二人の家族、両親が離婚している家族、シングルペアレントの家族、おばあちゃんに育てられている家族など、様々な形態があるのだけれど、それも隠すことなく、ポスターにして発表する。

学校が始まる前に母親にさよならを言うかわいい学校の女の子
写真=iStock.com/Dobrila Vignjevic
※写真はイメージです

自分のアイデンティティを隠すことは自己否定につながる

スティーブ・ジョブズの後継者、アップルの現CEOティム・クックは、自分がゲイであることを公表するに際し、こう述べている。

「自分はゲイであることを誇りに思っている。ゲイでも大丈夫ということを子どもたちにも伝えたかった」

そしてスティーブ・ジョブズ自身は、自分が養子であることを公表していた。

自分がゲイかどうか、養子かどうか、それは自分のアイデンティティの根幹に関わること。それを隠すことは、批判を恐れてありのままの自分を隠すこと、つまり自己否定に繋がる。

シリコンバレーでは、子どもの頃からありのままの自分を堂々と公表する場が与えられている。それどころか奨励されている。

「All about me」の他にも、「Show and tell」というプロジェクトがある。これは先生が指定したテーマに合ったものを学校に持ってきてみんなに見せながら、それが何か、どこが素晴らしいのかなどを説明する時間。好きなおもちゃを持ってくる、好きな本を持ってくる。そしてみんなの前で、そのおもちゃや本のどこがすごいか、なぜ好きなのかなどを話す。さらに、お気に入りのパジャマのまま学校に行っていい、パジャマデーなどもある。