アシックス、アディダスの「新厚底シューズ」の実力
そこにあったのは「打倒ナイキ」という目標である。
4月下旬、アシックスとアディダスが欧州でそれぞれランニングイベントを実施した。契約ランナーたちに発売前の新しいモデルのシューズを着用させて、「5km」「10km」「ハーフマラソン」の記録を狙わせたのだ。いい記録が出ればメディアがそれを報じて、新シューズのいいPRにもなる。
先行はアシックス。4月24日にスペイン・マラガでイベントを仕掛ける。アシックスの誇るアフリカや欧米などのトップアスリート79人が新シューズを履いて参加した。
後攻となるアディダスは4月30日にドイツ本社があるヘルツォーゲンアウラハでイベントを開催。やはりアフリカなど世界から招待したエリートランナーが新作シューズを履いて独自設定した周回コースを走った。
結果はどうだったのか。天候(気温、湿度、風)、コース、レース展開が異なるため単純な比較はできないが、各部門のトップタイム(□がアシックス ■がアディダス)を比べた。
女子ハーフマラソン
□1時間7分30秒 ■1時間7分28秒
男子ハーフマラソン
□59分54秒 ■59分30秒
女子10km
□31分39秒 ■30分24秒
男子10km
□27分14秒 ■26分50秒
女子5km
□14分45秒 ■14分37秒
男子5km
□13分20秒 ■12分53秒
両社ともハーフマラソンのタイムは今ひとつだったが、10kmと5kmでは好タイムが続出した。アシックスは4つ、アディダスは9つのナショナル(選手の出身国)記録を出した。
しかし、このナショナル記録に“価値”があるかと言われれば、微妙だ。5kmや10kmは、ロードを走るかトラックを走るかでタイムが大きく異なる。競技的に、メインはトラックであるため、今回両社で実施したロードでの記録はそもそも“価値”が高いとはいえない。アシックスは「79人のうち27人が自己ベスト」としているが、そのなかには5km・10kmレースをほとんど走ったことがない選手も含まれている。