昭和の人気番組「俗悪番組」と呼ばれていた

あえて言おう。「僕たちは俗悪番組から人生を学び、オトナになった」と。

かつて有識者たちから「俗悪番組」とされた「8時だョ!全員集合」や「オレたちひょうきん族」がなぜ多くの人たちの心に今も残り、人生を変え、現在では「名番組」と評価されているのか?

その答えは実は上の「BPOの見解」の中にある。「番組制作者たちが時代を見る目、センスや経験、技術を常に見直し、改善し、駆使してきた」からである。

こんな面白い話を、前出の番組プロデューサーはしてくれた。

「かつてペット番組では、イヌが一番人気でしたが、今はネコが一番人気です。それはなぜか? 『ペットに面白い芸をさせる』のがかつては主流でしたが、それが『面白いリアクションや行動』に自然に流れが移り変わったからです。それに伴って『芸達者なイヌ』から、『かわいいネコ』に人気が移ったんです」

「それに気がついたのは、誰かに言われたからではなくて、スタッフたちが長年の試行錯誤の中で身につけたもので気がついたんです。視聴者が何を求めているかを常にアンテナはってた結果なんです。私たちテレビマンは社会の変化を拒んでいるわけではありません。お笑いの質の変化にだって気がついていくんです。『痛みを与える笑い』が時代にそぐわなくなっていけば、それにわれわれや芸人さんたちが気がついて淘汰されていくんですよ」

「BPOはクレーマー視聴者に配慮しすぎです。よほど人権侵害とかなら言われても仕方ありませんが、学者さんたちの『やった感』のために現場が息苦しくなるのは勘弁してほしいです。それで、『最近のテレビはつまらない』と言われてもな、と思います」

ギリギリを攻めた「8時だョ!全員集合」「オレたちひょうきん族」

「8時だョ!全員集合」も「オレたちひょうきん族」も、それに続く数々の「伝説のバラエティー番組」たちも、俗悪番組と言われながら、世間から許容されるギリギリのところを攻めてきた。だから、当時の有識者さんたちに俗悪番組と言われながらも、多くの人たちに見られて、愛されてきた。

「テレビ番組は、数字が良くなければ意味はない」というのはある意味真理である。どんなに良い内容を放送したところで、誰も見てくれなければ屁のつっぱりにもならないからだ。だからいつの時代も番組制作者たちは、必死で視聴者が何を求めているか、アンテナを張り、ギリギリのところを攻めてきた。

なぜいま「テレビが面白くなくなっている」のかというと、BPOの指摘を恐れて、放送局の上層部やスポンサーが忖度しすぎて、制作者がギリギリを攻められなくなった結果、面白いコンテンツがテレビからなくなったからだ。