「そうは言っても、社会とかかわりながら、充実した毎日を送りたいのです」
「誰かの役に立っている実感を得たいじゃないですか」
「自分の使命を見つけて、人の役に立たなきゃと思って」

そう言う方には、具体的に「誰」の役に立ちたいかを尋ねます。すると、「誰と言われても……」と、ほとんどの方が口ごもるのです。

「人の役に立ちたい」と思うなら、まずは身近な人から

ある男性に、「では、奥さんの役に立つことをしたらいかがですか?」と言ってみました。すると「いや、それはちょっと」と苦笑いされました。

「奥さんだって人の内でしょうに、おかしな人だ」と思ったものです。

南直哉『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』(アスコム)
南直哉『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』(アスコム)

「人の役に立ちたい」と思ったときは、自分がいったい「誰」を大事にしたいのかを考えていけばいい。ごく簡単な話です。

現実的に言えば、大切にしなければならないのは、自分と縁の深い人間、身近にいる人間でしょう。でも多くの人は、具体的に問題を考えているのではありません。

「社会的に意味のあることをして生きがいのある人生を送れば、この重苦しい気分が軽くなるはず」と、なんとなく思っているだけです。

このように悩んでいる方の話を聞くと、現状に不満や問題を抱えていて、それを直視できないでいる場合が多いようです。しかもそれは、感情を抜きにして問題を解きほぐせば、すぐに打開策が見つかりそうなことです。

たとえば、人間関係が希薄なのであれば、自分から人の中に出かけて行くようにする。それが苦手なら、身近な人間関係を見直してみる。

人生で不具合を起こしているところ、自分が抱えている不満や問題を調整できれば、わざわざ「生きがい」や「やりがい」を探す必要はないのです。

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