子供は放っておけば勝手に探究を始める生き物

かつて大学進学は「憧れて目指すもの」でしたが、今は「せめて大学ぐらいは」というセーフティーネットになっています。中学受験も同様で、すてきな校風の学校に憧れて、ここで学べたらいいねという受験から、中学受験で失敗したらもう後はないくらいに緊迫感の強いものになってしまっているようです。

お茶の水女子大学附属小学校前副校長の神戸佳子さん(撮影=小松士郎)
お茶の水女子大学附属小学校前副校長の神戸佳子さん(撮影=小松士郎)

まずは親自身が「子育てに失敗してはいけない」という考えを捨て、子供に対しても「失敗していいんだよ」というメッセージを送ってください。そうすることで、子供はいろんなチャレンジができる強さを身に付けていくのではないでしょうか。

最近の教育上のキーワードとして探究心とかメタ認知とか、いろいろな言葉が飛び交っていますが、そもそも子供というのは、放っておけば勝手に探究を始める生き物です。

「放っておけば」がミソです。

今は習い事やら塾やらスケジュールがいっぱいで、「放っておかれる」時間が子供たちにないのです。ですから、親御さんにお願いしたいのは、子供が自由に過ごせる時間をつくってやることですね。重要なポイントは、その間、親も自分の時間を楽しむことです。

一緒に自然の中に出かけていって、親子でキャンプするなんていうのはとてもいいことですね。でも、親が「ここで探究心を身に付けさせよう」などと“親プロデュース”のキャンプにしてしまっては台無しです。親自身がまず、「自分のために」楽しむ。あとは放っておけば、その姿を子供が見て、勝手に自然に興味・関心を持つようになります。

家の中に本を置いておくのもいいでしょう。親御さんが料理に興味があれば、料理関連の本を置いておく。そうすると子供はいつの間にか見るようになっていく。

また、夫婦で新聞やニュースを見て、思ったことを話し合うことも大切です。親が子供と話すときには、具体的でわかりやすい子供向けの話し方をしますが、夫婦で話すときは大人の会話です。子供は両親の会話をなんとなく聞きながら、大人の話し方のニュアンスや、抽象的な言葉の使い方を覚えていきます。

こういった工夫は、いわば「家庭の文化的資産」ともいうもので、それが豊富な家庭と貧しい家庭では、子供の成長に差が出てくるのは明らかです。

あとは「優しい子供に育ってくれればいい」くらいにゆったり構えていること。子育てが本当に大変なのはほんの一時です。子供はどんどん成長し、変わっていきますから、悩んだこともあっという間に笑い話になっていきますよ。

(構成=田中義厚)
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