「行きたい会社にOBがいない」人でもOB訪問を実現する方法

①は、本業を持つ忙しい社会人へのアポ取りや、訪問スケジュールの調整など、実社会に出た時に役に立ちます。

主たる目的である②は、短時間でいかに自分を理解させ印象に残すか、を実践する場だと捉えてください。

たまに③の「OBの仕事の実際」を聞くだけの姿勢の学生がいますが、それははっきり言って時間のムダです。そのOBの名前と仕事内容くらいはざっくり調べていくのは当たり前だとして、「茅ヶ崎に住んで毎朝、サーフィンで海に入ってから会社に来るんだよ。愛車はアメ車の……」といったプライベートや趣味の話を聞いても役には立ちません。時間のロスです。

そこは、あなた自身の考えをぶつける場です。受け身で行かないでください。おそらくOB訪問でもらえる時間は1時間程度でしょう。

あなたがすべきは「初対面の相手に短時間で自分の人となりを伝え、興味を持ってもらう練習」なのです。

自己PR・志望動機を紙に落とし、あなたという人間を初対面で伝える、そのOBの経験に基づいたフィードバックをもらうことに多くの時間を割いてもらってください。

そして④。そのOBとのつながりは、仮にその会社に縁がなかったとしても続いていきます。同じ業界はもちろん、異業種であっても、潮が満ちれば再びその会社への道が開けることもあります。そうやって温め続けたつながりによって転職を成し遂げた仲間は枚挙にいとまがありません。くれぐれも「落ちたから音信不通」はやめましょう。

ところで、「行きたい会社にあまりOBがいないのですが、どうしたらいいですか?」という質問をたまに受けますが、答えは「手繰たぐり寄せろ」です。

日常の延長線上の友人や教授などのつながりに加えて、今はソーシャルメディアもあります。わらしべ長者のようにつながりを伝っていきながらあくまで迷惑をかけないかたちで、どんどん人脈をつくっていくことは可能です。

ちなみに、同僚にO森さんという優秀なコミュニケーションデザイナーがいるのですが、彼は会社にほとんどOBのいない大学の出身でした。O森さんはどうしても入社したい、OB訪問をしたい、という一心で何をしたと思いますか?

勝浦雅彦『「伝わらない」は当たり前 つながるための言葉』(光文社新書)
『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)

毎日スーツで会社の前まで行き、掃き掃除をしました。そしてゲートから出てくる社員に声をかけOB訪問をお願いし続けたのです。最初は訝しがる社員もいましたが、そのガッツを意気に感じて多くの社員が応じてくれ、「どうしてもうちの会社に入りたくてゲートの前でアタックしてくる学生がいる」ということが社内で評判を呼ぶようになりました。そして面接の時に「君が噂の……」という状態で、みごとに内定したのだそうです。

この話のポイントは、O森さんが「自分の頭で考えて、オリジナルの手法で道を切り拓いたこと」にあります。意のあるところに道は通ず、というやつですね。

もしあなたが同じことをしても、「前にも似たような学生がいたな」、あるいは「勝浦の本を読んだの?」と見透かされてしまうのがオチです。そもそも、もうこのご時世においては、会社の前で守衛さんにつまみ出されてしまうかもしれません。時代と条件によってとれる戦略は変わっていくのですから、常にオリジナルなものを編み出さなければなりません。