自衛隊が守っているのは自分たちの情報システム

防衛省にはサイバー防衛隊が存在するものの、そのミッションの主たる目的は重要インフラを守るというより、自衛隊・防衛省の情報システムを守ることになっている。

自衛隊の情報システムを守ることが日本のサイバー防衛にとって重要であることは言をたない。

しかし、サイバー空間が公共化している現代のデジタル社会では、サイバー空間を構成する情報通信インフラや、そうしたインフラに依存している金融などの重要インフラを守らないと日常生活が成り立たなくなる。そういう観点から、日本を守るためのデジタルセキュリティに関わる自衛隊の役割については、法律上で明確にする必要があるのではないだろうか。

自衛隊が任務として、重要インフラがサイバー攻撃で攻められないよう情報収集や分析、評価、そして必要に応じて事案対応を行う必要があると考えている。自衛隊が直接的に重要インフラ事業者などとも情報共有をしなければならない。

誤解のないように言えば、自衛隊は、関連の民間企業とは情報交換などを行っている。ただそれは、自衛隊のシステムを守る目的での情報共有であり、それでは国のデジタルセキュリティを守るには不十分だと言わざるを得ない。直接、国外から安全保障を脅かすようなサイバー攻撃・ハイブリッド攻撃があった際に、国民を守り切ることができるのか。頼りない状況が続いているように思う。

サイバー攻撃で死者が出ることもあり得る

日本の同盟国であるアメリカでは、米軍はNSA(国家安全保障局)の監視活動や、重要インフラ事業者からもデータや情報を集めて分析して、国外からのサイバー攻撃に備えているのである。

そこは軍が出てこなければいけない話なのだ。

サイバー攻撃を防ぐ兵士
写真=iStock.com/Smederevac
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新型コロナウイルス感染症は人の命を奪う。一方で、サイバー空間のウイルスであるマルウェアでは人は直接的には死なないが、パソコンやサーバーなどの「命」が奪われる。そしてそんな破壊が大規模であったり、長く続くようなことがあれば、ビジネスや産業が死ぬかもしれない。

結果として、我々の生活に多大なる影響を与えることになる。さらに電力などのインフラや、自動運転システムなどが攻撃されると、実際に死者が出ることだってあり得ることも覚えておいたほうがいい。