個人投資家の間でマネーゲームの様相に
それに加えて、感染再拡大によって世界全体で動線の寸断が長期化するとの見方が増えた。動線が寸断された中での経済活動にIT先端企業が果たす役割は多い。成長への期待は大きく高まり、メタなどの株価上昇が勢いづいた。先行きへの期待が幻想のように大きく膨らみ、市場の阻害要因をコントロールできるという“コントロール・イリュージョン”の心理に浸る投資家が増えた。
特に、米国政府の失業保険の特例措置によって一時的に収入が増えた個人は、“ステイホーム”の時間を使ってゲーム感覚でメタなどの身近な銘柄を買い始めた。財務内容や事業戦略などを精査することなく株を買い、たまたま大きく上昇したことに自信を深めた人は多かった。彼らはSNSに自分の投資手法を投稿し、周囲の行動をまねる個人投資家が急増した。
そうした投資家の存在が町を練り歩く“チンドン屋”のようなにぎやかな雰囲気を醸し出し、米国の株式市場に“バンドワゴン効果(本当は関心がなかったが音楽隊のにぎやかな雰囲気につられてしまう心理)”が広がった。その結果、ゲーム感覚で株を買う個人が増えてマネーゲームが鮮明化した。2020年3月中旬から2021年11月中旬までの間にメタの株価は2.3倍上昇した。
FRBの金融政策転換のインパクト
しかし、いつまでも資産の価格が上昇し続けることはあり得ない。歴史を振り返ると、米国の金融政策の転換が株価上昇トレンドを終わらせたことが多い。2021年11月下旬、FRBのパウエル議長が物価上昇は一時的との認識が誤りだったと認めた。それを境に、米国の利上げと量的金融緩和の縮小への警戒が急速に高まった。米金利は上昇した。
無リスクの資産である国債の流通利回り上昇によって、投資家はリスクのある株式に資金を投じることに慎重になる。さらに1月のFOMCにてFRBは金融政策を転換する意思を表明した。3月以降は、超低金利と過剰流動性の維持から、利上げと流動性吸収へ金融政策が変わる。期待先行で株価が上昇したメタなどが売られ、米国の主要株式インデックスの中でも先端銘柄が多く組み入れられているナスダック総合指数の下げ幅が大きい。