あなたはなぜ、ぐっすり眠れないのか――理由①深部体温の混乱
人間の体は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しながら、深睡眠がとれるようになっています。しかし、ぐっすり眠れない人の場合、なかなか深睡眠が訪れなかったり、訪れてもすぐに終わったりしてしまいます。これには、「深部体温」と「自律神経」が大きく関係しています。
深部体温とは、内臓など体の内部の体温で、朝目覚めると上昇を始め、日中は高めのまま推移し、夜にかけて低くなるように、一日を通して決まったリズムで変動しています。そして、私たちの体には、深部体温が下がると眠くなるという仕組みが備わっているのです。
しかし、よい睡眠がとれない人は、この深部体温のリズムが乱れ、夕方のピーク時になっても体温が上がらない、夜、ふとんに入る時間になっても体温が下がらないという問題を抱えていると考えられます。
深部体温のリズムは、夜の睡眠時に多く分泌されるメラトニンというホルモンの影響を受けており、このホルモンがしっかり働くためには、朝きちんと太陽の光を浴びること、そして夜にブルーライトなどの人工的な光を浴びないことが重要です。
今の私たちのライフスタイルでは、この光とのバランスが崩れてしまっています。帰宅時間が遅かったり、深夜までテレビやスマートフォンを見ていたり……。
その結果、光の力に影響されてホルモンの分泌が乱れ、人が本来持っている「太陽が昇ると目覚め、暗くなると眠る」という体内リズムも乱れ、さらに眠りにかかわる深部体温のリズムまでもが乱れるという負の連鎖が起きてしまっているのです。
あなたはなぜ、ぐっすり眠れないのか――理由②自律神経の乱れ
もうひとつ、睡眠に大きな影響を与えている原因は、自律神経です。「交感神経」と「副交感神経」のふたつから成る自律神経は、全身に巡らされ、私たちの心身のすべての活動を調整しています。
交感神経は、日中の活動時や、緊張やストレスを感じるとき活発に働きます。一方、副交感神経は、体や脳を回復させる力があり、リラックスをしているとき、特に眠っているときに活発に働いています。
夜になって体が休息の態勢になると、副交感神経が優位になり、人は自然と眠りやすい状態になります。
しかし、現代では多くの人が夜遅い時間まで仕事などに追われ、ストレスを感じながら、交感神経優位な緊張モードのまま夜を迎えています。これでは、寝る時間がきたからとふとんに入っても、すぐに眠りにつけるはずがありません。
夜を迎えるにあたり、ストレスや緊張から解放され、交感神経の働きを少しずつ鎮め、副交感神経を優位にすることは、とても重要なのです。
眠りの過程は、飛行機の着陸のようなものです。
頑張って高い場所を飛んでいれば飛んでいる(交感神経が働いている)ほど、高度を急降下させることは難しく、着陸する(副交感神経が働いて眠りにつく)までに長い時間がかかるのです。